携帯電話のブラック情報(1)電話料金の不払

多重債務者が、自己破産手続きをとったときに、携帯電話料金の滞納があって、携帯電話利用契約を解除されてしまうことがある。

とはいえ、毎月発生する携帯電話料金については、破産裁判所は、大幅な滞納がなければ、固定電話料金と同じように、そのまま毎月支払い続けることについて、ある程度は黙認し、特に問題視することはないというのが一般的である。

しかし、ドコモ、au、ソフトバンクのスマホの月額料金は高額なので、滞納してしまっているとたちまち5万円以上になってしまうことがある。

こういう状態で自己破産を決断して、各債権者に受任通知を送れば、それ以降の支払いについては、偏波弁済だ、として、問題視されるという可能性は否定できないので、弁護士としては、破産法の建前からすると、非常に気持ちが悪く、依頼者に対して「大丈夫ですよ」といえなくなり、その結果、多重債務者も不安を感じる、という事態が起きてしまう。

多重債務の解決にあたっては、まずは生活の再建を優先し、例えばこれまでの滞納した携帯電話契約は解除されるにまかせて、破産手続、債務整理、小規模民事再生などの手続に進み、新しい電話番号にして、債権者からの連絡を避けることも兼ねて、携帯電話利用契約を新規で別の電話会社でやり直してもらうことがある。

気を付けないといけないのは、携帯電話料金の滞納が個人にあると、その滞納情報(不払い情報)は、ドコモ・au・ソフトバンクの3社と一部のMVNOでは、情報交換されて共有されていて、情報を交換している電話会社に新規契約を申し込むと断られてしまう、という事実である。

正確にいうと、電気通信事業者協会(TCA)に加盟していて、かつ、不払い情報の交換を実施していると発表している、下記(末尾に記載)の通信会社である。

http://www.tca.or.jp/mobile/nonpayment.html

但し、破産手続をとっても、免責決定がされていれば、不払い情報は抹消される。

免責と同時に通信会社側で自動的にすぐにTCAに抹消申請してくれるとは限らないため、不払いにした携帯電話会社に免責されたことを債務者から連絡して、抹消請求をすれば、TCAに連絡してもらえるので、不払い情報は抹消される。

債務整理などの場合は、滞納料金を完済すればTCAの不払い情報は抹消される。

民事再生手続については、電気通信事業者協会のサイトには書かれていないが、カットされた残債権を完済すれば、抹消は可能なはずである。

すなわち、小規模(給与)民事再生の計画案提出および認可の際、携帯電話料金について少額一括返済を選択しておけば、少額一括返済後の時点で抹消、または計画弁済の完済時点で、不払い情報の抹消を、携帯電話会社に請求すればよい。

とはいえ、破産の委任を弁護士にして、破産申し立てをして、破産開始決定、免責決定までたどり着くには、数か月かかる。

このタイムラグの間に携帯電話会社を乗り換えないといけないときには、通信料金不払いのブラック情報により、再契約ができなくなる、免責まで待たなければいけない、という事態が起きうることに注意が必要である。

なお、家族には影響はないので、家族契約で持つことは可能である。

救いもある。

MVNOには、意外とTCAで不払い情報を交換していないところが結構あるのである。

現時点で、OCNモバイルONEもそうである。

OCNモバイルONEは、クレジットカード決済でなくても、銀行引き落としでも契約ができる。
https://mypage.ocn.ne.jp/ksupport/bill/payment_demand/

一方、多くのMVNOは、クレジットカード必須である。

となると、自己破産をしたり債務整理によってクレジットカードを当面持てない人には、OCNモバイルONEは、いざというときの駆け込み寺になるだろう。

OCNモバイルONEは、初期料金は無料に近く、初月無料、月2000円以下で電話番号付きスマホが持てて、端末も1万円前後から買えるからである。

 

(不払い情報を交換している通信会社)

電気通信事業者協会
不払者情報の交換
http://www.tca.or.jp/mobile/nonpayment.html
2.対象となるお客様
平成11年4月1日以降に契約解除となり料金不払いのあるお客様※1を対象といたします(料金が完済された場合は対象外となります※2)。
また、お客様の氏名及び住所等の情報を、契約解除となり料金不払いがある場合に他の携帯電話等の移動系通信事業者に通知することについては、契約約款の規定に基づいてお客様にご同意いただきます(既にご契約済みのお客様についても同様といたします)。
※1 自己破産等により免責が決定している方、係争中(料金不払いのあった事業者と料金不払いに関して訴訟が行われており、判決が確定するまでの間を言います。)の方は含まれません。なお、いずれの場合も、料金不払いのあった事業者でその事実が確認できる必要があります。
※2 料金を完済された事実が、時間的な制約から、情報交換を行っている他の事業者に伝わっていない場合があります。疑義のある方は、お手数ですがお申し込みの事業者にご申告ください。ご申告に基づき、お申し込みの事業者より完済された事業者に確認させていただきます。
3.交換の期間
契約解除後5年以内といたします(期間経過後は自動的に抹消されます)。
7.情報交換をする事業者
NTTドコモ
KDDI、沖縄セルラー電話
ソフトバンク
ウォルト・ディズニー・ジャパン
UQコミュニケーションズ
ウィルコム沖縄
サジェスタム
ラネット
ヤマダ電機
ノジマ
日本通信
汐留モバイル
ケイ・オプティコム
東日本旅客鉄道
ニフティ
フリービット
トーンモバイル
プラスワン・マーケティング
UQモバイル沖縄
ビッグローブ
TOKAIコミュニケーションズ
アクセル
SORAシム
Link Life
ドリーム・トレイン・インターネット
MEモバイル
メディエイター
ジェイコム
ジュピターテレコム

西村幸三

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京都・烏丸三条にある法律事務所を運営。ニュース・法改正・裁判例などから法務トピックを取り上げていきます。