携帯電話のブラック情報(2)端末料金の不払

携帯電話の通信料金の不払いと、端末代金の不払いは、実は、信用情報の登録先が異なるということを、知っている人は意外と少ない。

携帯電話利用料金はTCA、端末の分割料金はクレジットカード等の情報の信用機関であるCICなどである。

つまり、端末代金を分割にしただけで、不払いの場合、信用情報のブラックの登録が2か所にされてしまう、ということである。

ドコモ・au・ソフトバンクは、携帯電話契約を2年縛りにして、2年ごとの更新月を外しただけで中途解約扱いとして、1万円といった高額な違約金を設定し、携帯電話端末料金を9万円とか6万円といった異常な割高な金額に設定し、それを24回に分けて返済する割賦払い契約をユーザーと結び、一方で、月2000円ほどの額を月々割り引くので結局機種代金は無料あるいは格安ですよ、とセールスする、といった、面倒くさい販売手法を取る。

これは、ユーザーを2年間解約させないで高額な月額料金に縛り付けておくための、3大キャリアの側の都合で考案された、ユーザーに不利益な、ある意味あこぎな販売手法である。

しかし、ユーザーは、そのために、割賦販売契約を結ばされることになる。この場合、ユーザーの割賦販売債務がクレジット情報として、延滞もしていないのに、信用情報機関(CICなど)に個人情報が登録されてしまうことになる。

ちなみに、機種代金を一括で支払えば、割賦販売契約ではないから、CICには登録されない。

でもそんなことを知っている人はほとんどいないだろうし、一括払い契約を選択する人はもっと少ないはずである。。

やっかいなのは、通話料金を3か月以上延滞してしまうと、割賦販売代金までもが道連れで61日以上の延滞となってしまい、CICでの信用情報も、いわゆる事故状態(ブラック状態)となってしまうということである。

クレジットカードの支払いを61日以上延滞すれば、言い訳もしようがないけれども、携帯電話料金について、まさか同じ扱いがされると思っていなかった、という人はそれなりに多い。

3大キャリアのスマホを漫然と買って、携帯電話料金だけが遅れたつもりだったのに、携帯電話端末の割賦販売代金が遅れたことにされてしまい、ほかのクレジットカードなどの利用までドミノ式に次々と制限されたり、解除されてしまうことが起きてしまうのである。

CICの事故情報は、契約中および契約終了から5年間、保有される。

http://www.cic.co.jp/confidence/posession.html#sst02
http://www.cic.co.jp/qa/registration.html

携帯電話料金を支払わなかった延滞期間が61日に達しただけで、最低5年もの間、信用棄損状態が回復しない(不払いの事実を消す手段もない)というのは、相当なダメージである。

ユーザーは、本来、携帯電話利用契約を結んでいるだけのつもりであって、クレジットカードまで影響するようなリスクを自分が冒している、とは全く想定してはいない。

こうやってみるドコモ・au・ソフトバンクでスマホを割賦販売契約で買うことは、実は想像する以上にリスキーなことである。

それが、携帯電話会社がほとんどユーザーを縛るという自分の都合で、ユーザーを誘導して高額のスマホ利用契約に伴って割賦販売契約をさせているわけであるから、なんとも罪深いことである。

格安SIM会社(MVNO)で携帯電話を買えば、端末料金は普通は一括払いであり、1万円から3万円までで十分な機種が買える。

MVNOでも、好き好んで端末料金を分割払いにするユーザーもいるであろうが、安い料金を分割にしてCIC登録されてしまい一歩間違えれば信用情報が事故扱いというリスクを考えれば、分割払いはとてもお勧めできるものではないだろう。

ドコモ・au・ソフトバンクの販売手法は、ユーザーを自社に縛り付けるのに懸命である。

そのためにユーザーに割賦販売契約を結ばせ、CICに登録させ、不払いによるドミノ式の信用リスクのことをよくわかっていないユーザーがリスクにさらされてしまっている。

消費者目線でいえば実にけしからんやり方だ、というべきだろう。

私は、多重債務者の経済的更生のために、スマホをドコモ・au・ソフトバンクからMVNOに乗り換えさせるという指導はよくおこなっている。

しかし、この2年縛りの端末代金5万円とか9万円といった違約金が、解約時に一気に発生してしまい、しかもそれが信用情報のブラック化という事態を招いてしまう、という仕組みは、ユーザーにとって重大な不利益であり、苦しい立場にある方の経済的更生にとってまことに不愉快な障害になってしまっているのである。

賢い消費者は、できるだけ3大キャリアのスマホ契約は避けて、格安SIM(MVNO)を選ぶべきだろう。

通話かけ放題を使わなければいけない人は、スマホとは別に、ガラケーの中古端末を、ドコモ・au・ソフトバンク・ワイモバイルに持ち込んで通話のみの端末として開通して、かけ放題契約をすればよい。

ワイモバイルのPHSなら月1500円、それ以外のガラケーは月2200円から持てる。

持ち込み新規契約であれば、かけ放題については2年縛りにはなっても、割賦販売契約を結ぶことがないので、CICに登録もされないのである。

なお、携帯電話会社に全く支払わないまま5年以上滞納した、催告書も最近は送られてきていない、裁判も支払督促もされていない、債務承認書も書いていない、電話でも払うと言っていない、という場合は、消滅時効を主張することができる場合がある。

滞納者が、消滅時効を主張して、携帯電話会社がそれを受け入れれば、通信料金も端末代金も時効消滅することになる。

TCAやCICの登録内容の変更も請求できるだろう。

なお、それでも、不払いにした通信会社の内部情報としては保有される可能性があるので、同じ電話会社で契約するのはそれ以降もNGというのは起こりうる。

但し、消滅時効の起算点には注意すべきである。

消滅時効の起算点は、端末割賦販売代金の場合は催告による割賦販売契約解除成立の日、通信料金の場合は最終月料金の支払予定日より遡ることは無く、その後の携帯電話会社による催告や、一部弁済や債務承認によっても、中断することがある。

つまり、不払いにしはじめてから5年ちょうどでは時効消滅するわけではない、ということに注意が必要である。

西村幸三

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京都・烏丸三条にある法律事務所を運営。ニュース・法改正・裁判例などから法務トピックを取り上げていきます。