ATOKを使う理由

日本語IMEというとどれを使っていますか? という質問は、最近、流行らなくなってしまった。それくらいに、Windowsパソコンなら標準で付属しているMSIME、スマホならGoogle日本語、といったIMEが定番になってしまった。

しかしながら、私はいまだに、というかおそらくこれからも、ATOKを使い続けるだろう。なぜか。理由は2つある。

1.キーカスタマイズの設定環境が簡単に引き継げる

ATOKは、キーカスタマイズの設定環境を、簡単にファイル(****.STY)に出力できる。この設定ファイルは、ATOKのバージョンが新しく変わっても必ず取り込んで引き継げるように上位互換性が確保されている。

MSIMEでキーカスタマイズすると、設定ファイルはWindowsのレジストリに隠れてしまい、探し出すのに恐ろしく苦労する。しかも、バージョンが違えばもう移行は不可能に近い。やってやれないことはないようだが、IMEのヴァージョンごとでいちいちやり方が異なり、煩雑窮まり無い。バージョンごとに設定のやり方も変わる。つまりPCを入れ替えるともう引き継げない。果てはPC一台ごとにキーカスタマイズを設定しなければいけないことになる。マイクロソフトはユーザーのことを考えていないダメなソフトメーカーだと思う典型的な場面である。

2.辞書ファイルの場所が極めて分かりやすい。

ATOKのユーザー辞書の場所はわかりやすく、

C:\Users\(ユーザー名)\AppData\Roaming\Justsystem\atok23(バージョンによって名称が変わる)

を探せばよい。バージョンが23なら、ATOK23U1.DICが辞書ファイルである。 場所がすぐにわかるので、定期的なバックアップもバックアップソフトでのフォルダの指定が極めて簡単である。

つまり、PCが変わってもキーカスタマイズされた入力環境と辞書登録や学習内容が統一できるので、何台もPCがあったり、OSのバージョンがバラバラでも、簡単に入力環境を統一できるので、ストレス無く入力できる。これは、文章書きにとっては代え難い。MSIMEではこうはいかず、設定や辞書の移行に四苦八苦してしまうのである。

私は、PCを使い始めて20年以上になるが、はじめに使っていたIME(当時はフロントエンドプロセッサ=FEPといった)は管理工学研究所の「松茸」であった。そのころから、法律用語や京都の地名辞書を地道に強化し、松茸なき今はATOKに引き継いでいる。20年間かけて育て続けることができた辞書の価値ははかりしれない。ATOKのおかげである。もっとも、松茸のほうが使い勝手は良かったと思うこともあるが、それは昔話が過ぎるのでおこう。

何度か、MSIMEを試してみたこともあるが、正直、ATOKの使い勝手にはとても及んでいない。すぐに嫌になって、そのたび、すぐに使うのをやめてしまった。

昨年になって、ジャストシステムから、月額300円で10台まで、Windows、Mac、Android端末にATOKの最新版がインストールされるという、Atok Passportが発売された。

https://www.justmyshop.com/products/atok_passport/

これを入れてしまえば、いよいよ、OSの種類まで関係なくなる。タブレットでもスマホでも可である。iPhoneはだめだけれども。

ライセンスの本数をあまり気にすることもなく、社内全体を、同じ入力環境、辞書環境で統一できる。ストレスがない。いい時代になったものである。

西村幸三

lawfield.com

京都・烏丸三条にある法律事務所を運営。ニュース・法改正・裁判例などから法務トピックを取り上げていきます。