2020年12月8日に、本ブログの記事で、
スマホ契約プランはドコモの2980円ahamoで決まりか
https://blog.lawfield.com/?p=1135
を書いた。
その直後に、ahamoへの乗り換えはまだ待ち、ということを書くのも首尾一貫していなくない?と思われるかもしれない。
でも、実際、
「MVNOで十分。1000円台だもの」
「ahamoでも高い」
「家族にはLINEで話すし、それ以外の通話はほとんど要らない」
「3GBも使わない」
「家に光ファイバーあるからWifiで繋げば、外では1GBあれば十分」
という人も、世間には相当に多いのである。
そんな人には、現行のMVNOの方が、いまでも十分に割安である、ということも多い。
また、もうひとつ。
12月中に、ドコモが、MVNOに卸す通話料金を、大きく下げてくる可能性があるのである。
そうなると、MVNOの弱点であった、「通話料が高い」というデメリットがキレイに解消してしまう可能性があるのである。
2019年11月、日本通信が、総務省に対し、
「音声通話サービス料金をMVNOに卸す価格が高すぎる。もっと下げるように裁定して下さい。」
という申立をおこなった。
これに対し、総務省が、2020年6月30日、裁定をおこなった。
そこで、日本通信の主張が、一部認められた形となっている。
そして、NTTドコモは、裁定のあった6月30日から起算して6月以内に、その値下げした料金を決めなければならない。
さらに、その卸価格減額分は、6月30日まで遡及して値引きして、精算を行わなければならないとされたのである。
現在は、MVNOがドコモから音声通話料金を下ろしてもらう価格というのは、30秒17円(ボリュームディスカウントで14円)ほどであり、実際にMVNOがユーザーに提供する通話料金は、30秒20円と、横並びである(大手キャリアと同じ)。
専用アプリ経由でかけるときは、30秒10円。
これが今までの相場だった。
総務省の裁定によって、どの程度音声通話料金が減額されるのか、実は裁定だけ読んでもはっきりとはわからない。
しかし、「適正な原価に適正な利潤を加えた金額を超えない額」と裁定では定められた。
「原価」となにかということになるが、ヒントとして、総務省の裁定の中では、アクセスチャージが明記されている。
総務省の裁定
https://www.soumu.go.jp/main_content/000667799.pdf
携帯電話会社が他社からのアクセスを受け付ける際の請求金額(アクセスチャージ)は、この10年でほぼ半減していて、ドコモが1秒あたり0.041272円。KDDIは1秒0.055947円、ソフトバンクは0.053303円であるという。
ユーザーが3大キャリア同士の携帯電話で掛ける場合は、3大キャリアがお互いに請求するアクセスチャージの発信分と着信分の合計が、1秒あたりに3大キャリアが把握する原価+適正利潤、ということになり、計算上は、30秒で3円弱になるというのが、日本通信の見込みであるという。
30秒20円→30秒3円 なのだから、6~7分の1への値下げと、ものすごく安くなる。
3分かけても18円である。
果たしてそのとおりになるかはまだ決まっていない。
だが、12月中には、ドコモは、原価+適正利潤に基づくとドコモが算定する、音声通話料金の卸価格を発表して、値下げを実施し、各MVNOに、半年分の差額のお金を返さなければならない。
実は、ドコモが12月中に発表して実施しなければならない大きな課題は、この、MVNOへの音声通話料金卸価格の値下げ(と遡っての返金)なのである。
果たして、各MVNOはユーザーに遡って返してくれるのだろうか(笑)。
2020年6月30日の総務省の裁定を受けて、日本通信は、7月にすぐさま、携帯料金4割削減プランと銘打って、「合理的かけほプラン」というプランを打ち出してきた。
2480円で、通話は時間無制限かけ放題、データ容量は3GBである。
悪くない額である。
他のMVNOは追随していない。
他のMVNOは、どの程度音声通話料金が下がるかの見込みを立てられないのだろう。
とはいえ、12月末以降、ドコモ系SIMを使っているMVNOの音声通話料金が劇的に下る可能性がある。
ドコモが12月末までに発表すると、1月明けにはMVNOの劇的な値下げ発表で業界が盛り上がり、3月ケータイ商戦では、MVNOへの「乗り換え祭り」が起きてしまう可能性があるのである。
ドコモとしては、それをあらかじめ防ぐ(MVNO対策)のために、12月3日という、このギリギリのタイミングにおいて、大ニュースとしてユーザーに訴求するサービス価格にて、ahamoを発表しなければいけなかったのではないか、少なくとも一つの戦略要素となっていたであろう(ahamo発表の理由は、かなり複合的で、政府の要請、au・ソフトバンク対策、MVNO対策がからみあっていて、NTT持株会社による完全子会社化直後のこのタイミングにこのインパクトでやらざるをえなかったのだと思う)と、私は、うがった見方をしている。
ahamo20GBが2980円だといっても、ほとんどのユーザーは月に3GBを超えてまで家の外で通信をしない。
家に光ファイバーのある家庭なら、家ではWifiで繋ぐからである。
お年寄りともなると、1GBでも足りるくらいである。
「月1GBでも十分だ。通話は家族とはLINEで十分」、という高齢者には、イオンモバイルという強い味方がいる。
60歳以上限定で、データ3GB、月1280円である。
(60歳未満だと、データ1GBで1280円になる)
ガラケーからの乗り換えのために、イオンの店舗にあるケータイショップに、お年寄りが集まるのも当然である。
こんなお年寄りは、仮に音声通話料金も30秒3円4円と安くなれば、いよいよ3大キャリアのスマートフォンなど、馬鹿馬鹿しくて契約もできない。
ahamo2980円でもかなり馬鹿馬鹿しいほど高い。
差額の1700円分(30秒3円なら、280分である)となると、ビジネスマンでなければそんな通話はしない。
ahamoでかけ放題にするとイオンモバイル3GBとの差は2700円、通話450分。
大部分の高齢者にとって、MVNOでなくahamoを選ぶ理由はほぼなくなる。
ガラケーからの大量移行の行き先はMVNOで決定、ドコモ・au・ソフトバンクのスマホは解約
とはっきりすることになる。
さすがに家族の中にはデータ容量をもっと使家庭もあるだろう。
そういう家庭には、MVNOのシェアプランという強力な味方がある。
OCNモバイルの音声SIMは、データ3GBプランで1480円、データ10GBプランで月2880円、データ20GBプランは、月4400円である。
音声SIMを一枚1000円で最大4枚までシェアSIMとして追加することで、5台のスマホで、月額の容量を分け合える。
https://www.ntt.com/personal/services/mobile/one/option/share.html
3GBを5人で分け合えば、5人で5480円=一人あたり1096円となる。
20GBプランを5人で分け合えば、5人で8400円=一人当たり1680円となる。
実は、かなり安いのである。
3GBを5人で分けるなんて窮屈だと思われるかもしれない。
しかし、OCNモバイルには、旧プランという、いまでもひっそり契約できるプランがある。
これが、低速モード(250kbpsが安定して出る)に切り替えていても、バースト転送が都度150KBあるおかげで、ニュースサイトなどは普通に見られ、youtubeも低画質モードでほぼ見られるという、「低速最強」といわれるプランである。
シェアプランには、このOCNモバイルの旧プランが、いまでも最強の味方である。
https://www.ntt.com/personal/services/mobile/one/charge/other.html
今でも申し込める、ということを、意外と殆どの人は知らない。
旧プラン3GB1800円に音声シェアSIM4枚を追加すれば、5800円=一人1160円である。
バースト転送がついていることによって、1回のアクセスごとに150KBまでが高速で読み込まれるため、ニュースサイトくらいであれば、一画面ごとに文字程度を高速に読み込んでくれる。
そのバースト転送の分は容量を消費しない。
何人かで容量をシェアすればいい場合なら、OCNモバイル旧プランを、高速にする必要がある場面だけ高速で使う、というスタイルで使うのが、通話を余りしない場合では、最強のプランである。
話を戻して、12月中に、ドコモは、日本通信はじめMVNOに対する音声通話料金の卸価格の値下げを発表するだろう。
それを見極め、日本通信以外も含め、各MVNOが、どの程度音声通話料金を値下げするかは、かけ放題プランを強化してくるか、は一見の価値がある。
そういう意味で、年明けまでは、「待ち」だと言えるのである。
なお、MVNOの音声SIMは、データSIMに比べてプラス月700円と、ほとんど一律である。
この卸価格も、MVNOがこの世にできて以来、長年の間、高値に据え置かれたままである。
でも、この間、携帯電話回線数も莫大に増加しており、一秒あたりのアクセスチャージも10年で半減しているというのに、このプラス700円という音声SIMの卸価格の単価が同じというのは、原価に見合っていないとも言える。
仮に、この、音声SIMのプラス700円の卸価格が大幅に下げられれば、MVNOの価格競争力は劇的に上がる。
シェアSIMの価格競争力が特に上がる。
12月末には、ドコモは音声SIMのプラス700円の値下げまでは実施しないのかもしれない。
音声通話料金の卸価格を、どこまでどう値下げするか、わかっているのは、ドコモのみである。
渋い値下げをして、再び日本通信と第二次裁定バトルに踏み込むのか。
ドコモは日本通信とは何度も鍔付き合わせてきた犬猿の仲であるから、ありえないではない。
しかし、政府や総務省のプレッシャーがこれだけかかり、世間がこれだけドコモに注目する中で、ドコモは、MVNO卸価格について、シブチンな値下げでお茶を濁せるのか。
そんななかで、12月3日、ドコモは、ahamoを出してきた。
ドコモの社長は、ahamo発表会の最後にちらっと、MVNOのことにも触れていたが、ほとんどどのニュースでも注目されていなかった。
そもそもNTTは、MVNOで4強の一角を占めるOCNモバイルを保有している。
楽天モバイルは、会員アンケートでアドバルーンをあげているとおり、容量3GB~5GBで1000円台のプランを出す検討に入っている。
楽天モバイル(MNO)が、月1000円台で3GB容量を使った後低速でも1Mpbsで使えるプランを出してくる可能性は高い。
そうなると、再び、楽天モバイルが最強、ということにもなる。
折しも楽天は西友に20パーセントの資本参加をした。
既に西友には楽天ポイントの旗が掲げられているが、これから楽天モバイルショップが西友にできていくだろう。
注目の12月末から年明け、といったところである。