2020年12月22日、ソフトバンクも、新プランを発表し、ドコモのahamoに追随した。
月額2980円で20GBというプランを出してきた。
SoftBank on LINE という。
内容は、ほとんどahamoの横並びである。
・月額2980円
・月間通信容量20GB(超過後の通信速度は1Mbps)
→ドコモとの違いは、「LINEトーク」や「LINE通話」など、SNSサービス「LINE」の一部サービスについてはギガを消費せず使用可能
→しかし、ahamoでは海外ローミング時も国内と同様20GBの容量内で使える(料金上乗せなし)のに、SoftBank on LINEでは高額なローミング料金がかかる
・国内の音声通話についても5分以内であれば無料
・プラス1000円で時間無制限かけ放題
・5Gも同料金
・eSIM選択可
→ドコモのahamoはeSIM対応は現状では不明。
などである。
ソフトバンクの報道資料からわからないのは、「20歳以上の個人契約限定か(法人契約も可能か)」である。
→ドコモは20歳以上の個人契約限定である。
もしソフトバンクが法人契約でもこの2980円20GBプランを提供するのであれば、ソフトバンクが圧倒的に優位に立つだろう。
しかし、おそらく、ここまでドコモ横並び追随プランとして組成しているのだから、法人契約は認めないのであろう。
法人契約が大挙して2980円プランに移行すれば、ソフトバンクの客単価(ARPU= Average Revenue Per User)は、まさしく、破局的に激減する。
そのあたり、ドコモは法人契約不可という基本的な不利益事項をまずは告知してユーザーの混乱を招かないようにしているのに、おくれて発表しているにもかかわらず、法人契約不可なら不可と不利益事項をわかりやすく告知しない不親切さが、いかにもソフトバンクらしい。
ソフトバンクの法人ユーザーは、乗り換えられるのかどうかわからず混乱するだろう。追加告知はすぐにあると思われる。
LINEアプリ上から契約できるということであるが、これは、Web申込みというのとそう変わらない。
現状、LINEアプリに個人情報を一通り登録している人は少ないので、住所や本人確認書類のアップロード等、ほぼ一から入力が必要になる。
LINEアプリ経由申込みということは、個人契約を前提としているのだろうと思われる。
こうやってみると、SoftBank on LINE が ahamo より有利なのは、LINEの一部サービスの利用でギガが消費されない、という点になる。
但し、もうひとつ注意点は、ポイントである。
ドコモの ahamo は、dポイントが付くのかとか、NTTカードでの割引対象になるのかという点がまだ未決着のようである。
SoftBank on LINE にはLINEポイントはつくのであろうか。
SoftBank on LINE の料金はLINEポイントで支払可能なのであろうか。
こういった点が、わからない。
LINEポイントが付いたり、LINEポイントで支払えるとなれば、ユーザーは大喜びである。
LINEポイントは、使う場面では、かなり使いにくいポイントだからである。
LINEポイントとの連携を自在にすれば、ユーザーへの訴求力は極めて大きいし、キャンペーンでLINEポイントを付ければ、大挙してユーザーはなだれ込む可能性がある。
一旦LINEポイントとの連携を広く設定してしまうと、ドコモ、auユーザーのみならず、ソフトバンクの既存ユーザーにまでも、LINEポイントとの連携目当てに大量の乗り換えを招くことになり、ユーザーが流入すればするほど、ソフトバンクの売上減と原価圧迫のダメージは当初見込みより拡大するであろう。
しかし、ahamo が一切の割引無しの原価ぎりぎりのところで2980円という数字を出してきたのに、SoftBank on LINE がポイント割引を大盤振る舞いできるのであろうか。
一方で、LINEポイントの連携関係を中途半端なものにしてしまうと、期待したユーザーから逆にバッシングに遭うことにもなる。
あるいは、ソフトバンクらしく、最初だけ大盤振る舞いしておいて、ポイントとの連携を徐徐に狭めていくのだろうか。
いずれにせよ、ソフトバンクは、こういった不利益事項については、できるだけはやめに告知しないと、auが2020年12月9日に、amazon提携プラン月額9350円を、「月額3760円から」と表示して「不当表示だ」と大炎上した、二の舞を演じることになるだろう。
なお、細かいことは抜きにして、auも、2980円の追随プランを早々に出さざるを得ないから、賢明な3大キャリアユーザーは、他社に乗り換えるか乗り換えないかはさておき、3月には大量に2980円プランに乗り換えることになっていくだろう。
そのとき、3社は、ユーザーの囲い込みはあまりできず、奪い合いになるわけで、各社のブランドイメージが問われるところで、シェアがどうかわるかが見ものである。
なお、20GBもいらない人、特にお年寄りには、MVNOがやはりかなりオトクではあるのだが。
今回、ソフトバンクが、LINEモバイルをMVNOから撤退させることを正式発表した。
LINEモバイルがMVNO事業を新設分割で切り出さずに、ソフトバンクがLINEモバイルを吸収合併してしまえば、MNOがMVNOを今さら兼業できるわけがないので、切り捨ては自明のことではあるが、ソフトバンクが自社MVNOを存続させず見捨てた、というのは、「MVNOは先がないので容赦なく切り捨てる」という非情さが出ている。
ソフトバンクの発表のうち、それ以外の店舗プランやY!mobileプランは、特に見るところがないというしかなかった。
むしろ、サービス乱立でわかりにくくなっている。
売れるのだろうか?売れないだろうと思う。訴求力が失われてしまった。
切り換えの速いソフトバンクのことだから、店舗プランやY!mobileプランは、また、早々に再編される予感がある。
一方のドコモは、安価な小容量プランを、MVNO各社、自社でいえばNTTコミュニケーションズのOCNモバイルoneで、大きな柱にしようとしている。
MVNOが終わりかと言えばじつはそうではない。
卸元がMVNOへの卸価格を下げれば、MVNOの競争力はその分回復する。
そして、ドコモがMVNOへの圧倒的卸元としてシェアを握っている。
ドコモにすれば、MVNOへの卸は、貴重な収入の柱であり、回線本数の実績であり、これをみすみす切り捨てるとは到底思われない。
まずは、育てる方を選ぶだろう。
ドコモが、ahamoに続いて、低価格小容量帯でも、値下げ戦争を仕掛けてくる可能性はある。
なにしろ、NTTコミュニケーションズは、光回線やネットワーク技術で法人営業に圧倒的に強みを持つ会社であり、法人に向けて、大量契約ベースで低価格・小容量(容量シェアプランなど)でかけ放題プランを提供すれば、さらにシェアを奪えるのである。
ドコモが今後、
(1)国策
(2)ライバル会社からのシェア奪回
(3)NTTコミュニケーションズとのシェア獲得の連携
という観点で、MVNOで業界になにを仕掛けてくるか、注目である。