ワクチンを接種する優先順位

新型コロナワクチンの接種スケジュールが、ようやく明らかになりつつある。

 

(0)2月までに終了予定の日本人約160人を対象とした治験後、ファイザー製を特例承認
(1)2月下旬 一部医療機関の医療従事者(約1万人)
(2)2月下旬以降 新型コロナに関わる全国の医療従事者(約400万人)
(3)3月下旬 65歳以上の高齢者(約3600万人)
(4)4月以降 基礎疾患を有する人や高齢者施設従業員ら(約1020万人)
確保量次第では、(4)に60~64歳の人を含める。
(5)(未定) その他

 

ということである。

 

なんと優先順位がある人で5000万人ということになる。

 

高齢化社会で日本人の3分の1以上が65歳以上ということでもある。

 

問題は、優先順位のある人でも、接種をしない、または接種を躊躇して様子見をする人が、大量に出てくるであろうことである。

 

インフルエンザ予防接種でも、注射を打たない人は多い。高齢者でもである。

 

開発を急いだワクチンだけに、接種への不安から、打たない人は多くなるだろう。

 

もしそうなれば、優先順位ごとのスケジュールをどんどん繰り上げて、一人でも早く多く接種してもらうのが、集団免疫と終息への近道である。

 

しかし、ワイドショー報道などが、予防接種後に副反応で苦しんだり亡くなった人の報道などを始めて、煽れば、接種控えが拡がる可能性も大いにある。

 

コロナウイルスワクチンは、ほとんど軽度とはいえ、それなりに発熱や倦怠感などの副反応が出ると言われている。

 

アレルギー反応であれば、それはワクチン全般に添加されるグリコール酸化合物によるものだから、コロナワクチン特有の問題とはいえない。

 

ファイザーのワクチンは、注射後に、メッセンジャーRNAが、筋肉中でコロナウイルスの生成するタンパク質を作りだし、その抗体反応を起こして免疫を発生させるというものである。

 

ウイルスそのものではないので、従来型のワクチンよりもはるかに安全だとはいえるのだが、コロナウイルスの生成するタンパク質を体内で作り出すのだから、身体に一定の負荷を掛けることは確かである。

 

ただ、体力の落ちた人や持病を持つ者には、副反応のリスクはそれなりにあることも事実である。そういう人に優先して打つ、ということは副反応のリスクも優先順位のある人に多く出る可能性はあるだろう。

 

とはいえ、接種することで、コロナウイルスへの抵抗を高めて罹りにくくなることは確かである。

 

接種するしないは、自己責任というしかなく、リスクを計量して戦略として打たない人も、打つ人も、分かれるのはやむを得ないところではある。

 

むしろ、健康な者、社会経済活動を営んでいる中核の者は、優先順位こそ「その他」で低いが、可能ならば、早期に接種してしまいたいはずである。

 

スケジュールどおりにいけば、健康な者や50歳代以下のものは、5月6月にも接種できるかも定かではない。

 

しかし、接種しない者が相当数出てくるなら、接種のキャパシティを空きを一刻も無駄にすべきではない。

 

政府は、接種の申し込み状況を観察して、この接種の優先順位のスケジュールについては、早目早目にに逐次優先接種期間を繰り上げ、切り上げて、優先順位の低い人も早くに接種可能にしていくことが、大事だと思われる。

 

社会経済活動を担っている、60代以下の者、健康な者が、ハイリスク者へ感染させるリスクを過度に恐れずに活動できるようにならなければ、社会経済の正常化にはたどり着けない。

 

そういう意味では、ハイリスク者も、健康な低リスク者も、一人でも多く、早く、接種を進めることが大事になってくる。

 

米国では、ハイリスク者以外への接種を罰則付きで制限するなどした結果、想定より著しく接種ペースが遅れている。

 

病院や高齢者施設、障害者施設の利用者には接種を求めることは必要になってくるが、ワクチン接種の副反応のリスクもあるだけに、難しさも伴う。

 

むしろ、優先順位のある人の優先接種期間を早目に切り上げて、誰でも希望者は接種できるように早々に移行してしまうのが、賢明と思われるところである。

 

私はといえば、接種する。

 

健康でもあり、ハイリスク者に感染させることにおびえないで社会経済活動を優先したいからである。

 

自分ではなく他人はといえば、ハイリスク者こそ可及的速やかに接種すべきだと思う一方、一方、ハイリスク者に接種を進めることも躊躇される。

 

難しいところである。

 

以下は、参考記事。

ワクチン対応遅れる日本、理由は
2021.1.15 21:36 産経ニュース
https://www.sankei.com/life/news/210115/lif2101150059-n1.html
 国内では昨年12月、米製薬大手ファイザーから承認申請があり、厚生労働省は、他の先進国で承認されているなどの条件を満たせば審査手続きを簡略化する「特例承認」の手順に沿って審査を進める。

 一方、日本人に投与しても安全かを確認するために原則国内でも治験が必要という方針を堅持。2月までに終了予定の日本人約160人を対象とした治験の結果を見極めて判断する。

 最短で2月に承認されても、一般向けの接種は今春以降にずれ込む。まずは医療従事者から優先接種を始め、続いて重症化リスクのある高齢者への接種体制を整える。基礎疾患のある人、高齢者施設職員らは4月以降とみられる。

 

新型コロナワクチン、3独法傘下病院で先行接種へ 厚労省打診
2021.1.17 19:50 産経ニュース
https://www.sankei.com/life/news/210117/lif2101170044-n1.html

 厚生労働省が、国立病院機構など医療系の独立行政法人3機関に新型コロナウイルスワクチンの医療従事者向け先行接種を打診したことが17日、分かった。3機関は今後、ワクチンの流通拠点とすることも念頭に傘下の病院から先行接種する病院を選定し、使用が承認され次第、接種を始める。

 先行接種を打診されたのは国立病院機構のほか、地域医療機能推進機構(JCHO)、労働者健康安全機構(労災病院)の2機関。3機関は、国立病院機構140、JCHO57、労災病院32の計229の病院を傘下に持つ。

 政府は新型コロナワクチンの接種を、(1)一部医療機関の医療従事者(約1万人)(2)新型コロナに関わる全国の医療従事者(約400万人)(3)65歳以上の高齢者(約3600万人)(4)基礎疾患を有する人や高齢者施設従業員ら(約1020万人)(5)その他-の順で進める方針を決めている。確保量次第では、(4)に60~64歳の人を含める。

 このうち、(1)の一部医療機関の医療従事者については、日本人特有の副反応の有無などを確認する調査も兼ねており、厚労省は公的機関である3機関に先行接種の実施を打診。各機関は同意が得られた所属病院を先行接種する病院に選定し、2月下旬にも接種を始める見通し。

 承認手続きが進む米製薬大手ファイザーのワクチンは零下75度の超低温保管が必要で、通常冷蔵では5日間に限られる。政府は専用の超低温冷凍庫3千台を全国に配備する計画で、先行接種を行う病院は流通拠点となることが見込まれる。 昨年12月成立の改正予防接種法ではワクチン接種は国民の「努力義務」と位置付けられているが、原則として接種を受けるのは任意となっている。

西村幸三

lawfield.com

京都・烏丸三条にある法律事務所を運営。ニュース・法改正・裁判例などから法務トピックを取り上げていきます。