西山朋佳(1995年6月27日生)は、女流棋士でタイトル三冠を誇り、福間香奈(旧姓里見香奈。1992年3月2日生)女流五冠と分け合い、女流棋士界で絶対的な2大巨頭となっている。
その西山朋佳が、2024年7月24日の朝日杯将棋オープン戦でもプロ棋士に勝利し、棋士編入試験受験資格(いいとこ取りで10勝以上、かつ6割5分以上の成績)を得た。
この受験資格を得る水準は相当に高い。
アマ・女流棋士が、プロ棋士の一般棋戦に参加し、少なくとも2勝1敗で行くには、1回戦に勝ち、2回戦に勝ち、3回戦負けでようやく0.666だから、2,3回戦まで勝ち抜くことが重ならないと届かない。
プロ棋士の棋力はアマとは絶望的な差があるので、プロ棋士編入試験受験資格を得るだけでもたいへんな偉業である。
棋士編入受験挑戦は、里見香奈に続き女流棋士として史上2人目の受験である。
さて、西山朋佳は、果たして、プロ棋士編入試験5番勝負を通過するであろうか。
2022年に福間香奈が受験したときは、多くの将棋ファンは、里見香奈なら合格するだろうと予想していた。
私もそう予想していた。
しかし、結果は福間香奈は0勝3敗で敗退、不合格。
これは、振り返ってみると、試験官となる対戦相手が強かった(あたりが悪かった)な、と思う。
プロ棋士編入試験では、もっとも直前にプロ棋士になった棋士から順に5人と対戦する。
福間香奈が敗れたのは、徳田拳士、岡部怜央、狩山幹生である。
徳田拳士は、そのプロ入り初年度、加古川青流戦でいきなり棋戦初優勝、さらに王位リーグ入り。
岡部怜央は、プロ入り初年度、やはりいきなり王位リーグ入り。
狩山幹生は、プロ入り初年度、順位戦C級2組で7勝3敗。
正直、相手が悪かった。
とはいえ、2022年にやはりプロ棋士編入試験を受けた小山怜央は、狩山幹生にこそ敗れたものの、徳田拳士、岡部怜央、横山友紀には勝利している。これは小山怜央が相当に強いことを示している。小山怜央は現在レーテイング1606(90位。以降いずれも7月5日現在)なので、棋士の中でほぼ真ん中くらいに位置する実力ということになる。
西山朋佳が、プロ棋士編入試験の資格を満たす間に10勝した棋士のうち直近4人のレーテイングをあげると、
阿部光瑠 七段 1626(81位)
木村一基 九段 1691(55位)
高橋道雄 九段 1477(141位)
石田直裕 五段 1654(69位)
である。レーテイング1600代の棋士にコンスタントに勝っている。
プロ棋士編入試験の試験官は、
高橋佑二郎四段 1503(130位)
山川泰熙四段 1545(110位)
上野裕寿四段 1591(96位)
宮嶋健太四段 1556(107位)
柵木幹太四段 1539(116位)
と、いずれも1500台である。
レーテイングによる力関係は、何戦か戦うほどかなり正確に統計的におさまるので、西山朋佳のプロ棋士編入試験の突破は、かなり期待できるだろう。
ちなみに福間香奈が対戦して敗れた3棋士は、現在のレーテイングで、
徳田拳士1613(87位)
岡部怜央1703(52位)
狩山幹生1714(48位)
である。正直、厳しいぶれであったと思われる。
比較すれば、西山朋佳がプロ棋士編入試験に通過する確率は、かなり高い、というのが私の見立てである。
では福間香奈と西山朋佳のどちらが強いかと言えば、タイトル五冠とタイトル三冠の数字通り、ほんのわずかに福間香奈のほうが強い、というのが、一般的な評価だろうと思う。
福間香奈のプロ棋士編入試験はやはり相手が悪かった、ということではないだろうか。
西山朋佳三冠は、伊藤博文七段の弟子で、その妹弟子は藤井奈々女流初段。
藤井奈々女流は、読売新聞の観戦記者であり将棋ペンクラブ対象を取ったり詰将棋作者として露出が多い。
西山朋佳三冠は大阪府狭山市出身。藤井奈々女流は京都府宇治市出身。
将棋界は、関西将棋会館を拠点とする関西勢の棋士が人口比に比べるとなぜか強い。
藤井聡太もそもそも関西勢(棋界では愛知は関西所属になる)である。
ちなみに競馬も関西組(栗東トレセン組)が強い。美浦トレセンも施設的にはとうに追いついているのに、不思議なことである。
関西勢には頑張って欲しいなと思うところである。