レプリコンワクチンは接種すべきかすべきでないか

Meiji Seika ファルマからCOVID-19(新型コロナウイルス)用のワクチンとして、新たにレプリコンワクチンが、発売され、2024年10月から接種が開始している。

 

コロナウイルス用ワクチンとしては、現在、ほかにファイザー(コミナティ)、モデルナ(スパイクバックス)、武田(ノババックス)などが日本では接種可能であるが、モデルナは接種数がファイザーより一桁少ない。ちなみに武田はさらにファイザーより二桁少ない。

 

モデルナは、副反応のキツさから、初回接種からして既に避けられてきた傾向がある。

 

今シーズンは、ファイザーか、レプリコンか、あるいはmRNAワクチンではない武田のノババックスか、という選択を考える人が増えそうである。

 

武田のノババックスは組換えタンパクワクチンで、不活化ワクチンの一種であり、日本においても、B型肝炎ウイルスワクチンなどで以前からの利用されてきたタイプのワクチンである。mRNAではなく、スパイクタンパク質を接種する。

 

今シーズンから登場したレプリコンワクチンは、1瓶(1バイアル)開封したら16人分を6時間以内に接種しないといけない。

 

ファイザーであれば、1バイアル1人分である。以前は1バイアル6人分であったが、今年のシーズンから1バイアル1人となった。

 

新型コロナウイルス感染症が5類になって以降、ワクチン接種者は高齢者が大半になるとみられる。

 

高齢者は体調不良などで当日の接種キャンセルも出やすいから、医療現場からしたら、せっかくのバイアルの残りを無駄にしたくないから、バイアル1本が1人分となったファイザーの方が医療機関にとって使い勝手がよいことは明らかである。

 

だから、医療機関の選択として、レプリコンワクチンは回避されることが多いように思われる。

 

そうすると、レプリコンワクチンをわざわざ希望するような患者が一定数ある医療機関か、あるいは製薬会社からのセールスに応じた医療機関が、レプリコンを選択する傾向にあるのではないかとも思われる。

 

大人数に接種できる場合は、薬価差益も出やすいだろう。しかし、端数で無駄が出れば医療機関としては損失が大きい。

 

もちろん、レプリコンが優れたワクチンであるという信念を持って選択する医師もいるだろうし、レプリコンワクチンを希望する接種者も一定いることだろうとは思われる。

 

さて、このレプリコンワクチンの特徴は、mRNAが体内で複製・増殖する、というところにある。

 

ファイザー、モデルナのmRNAワクチンは、mRNAが体内で複製・増殖はしない。

 

そこが大きな違いである。

 

そして、レプリコンワクチンが問題だといわれる最大のポイントはそこにある。

 

mRNAワクチンは、ファイザーであってもレプリコンであっても、体内に入ったら、細胞に入り込み、細胞内でスパイクタンパク質を産生する。

 

そのスパイクタンパク質は、コロナウイルスが産み出すスパイクタンパク質の切れ端のようなもので、体内にコロナウイルスのスパイクタンパク質に反応する抗体を産生する。

 

その抗体が、重症化予防に有効である、という仕組みである。

 

ワクチンなんだから感染防止に有効なのでは?と疑問を感じるかもしれないが、実は、レプリコンワクチン含め、新型コロナウイルスのワクチンは、もはや、感染予防効果をあまり強調していない(感染予防効果はもちろん治験において検証はされている)。

 

オミクロン株以降でも、ワクチンによって異なるものの、数十%程度の感染予防効果、発症予防効果(たとえば6割とか4割とかだから、たいした感染予防効果とはいえない)があることは各種エビデンスで確認はされている。

 

但し、接種後どんどん効果は薄れ3か月から6か月くらいでほとんど感染予防効果は消えてしまう。

 

ちなみに始原株(武漢株)に対しては初期のmRNAワクチンは90パーセント前後の感染予防効果が認められたが、今や昔である。

 

それで、日本では、抗体価を上げるためブースター接種、高齢者などはワクチンを定期的に接種することとしていたのである。

 

しかしコロナウイルス用ワクチンの大規模な定期接種をやめずに続けている国は殆ど無く、レプリコンワクチンに到っては承認され定期接種の候補にされているのは日本だけである、といった報道もなされている。

 

コロナウイルス用ワクチンについては、今では、感染予防効果をうたっても実際には高確率で感染してしまうので、重症化予防効果に効能のセールスポイントが移った。

 

Meiji Seika ファルマの資料によれば、感染予防効果や重症化予防効果について、

https://www.meiji-seika-pharma.co.jp/medical/product/vaccine/kostaive/pdf/KO0001.pdf

 

の14頁に記載がある。

 

感染予防効果については、年齢層にもよるが接種後1年で50.8% ~ 66.5%の予防効果。

 

重症化予防効果については、「始原株(一番最初期に中国の武漢などで流行したアルファ株)」に対して、95.3%の重症化予防効果がある、となっている。

 

ここで注意すべきは、「(一番最初の)始原株(アルファ株)」の重症化率と比べて、ということである。

 

オミクロン株以降の重症化率と比較されていない。

 

実際の治験は、デルタ株流行下のベトナムにおいて実施されている。デルタ株までを広い意味で始原株に含めて治験をしたということなのかもしれない。

 

2024年5月29日 Meiji Seika ファルマ株式会社

「第2回厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会 研究開発及び生産・流通部会

季節性インフルエンザワクチン及び新型コロナワクチンの製造株について検討する小委員会

における資料

https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001266060.pdf

 

ところで、アルファ株~デルタ株は、ご存じの通り、重症化率はそれなりに高かったが感染力はそこまでではなく、オミクロン株以降の株は、重症化率は激減し、一方で感染力は桁違いに高くなる。

 

現在流行している株は、全て、オミクロン株の派生株である。今シーズンの定期接種ではJN.1株を対象に各社のワクチンが開発され、変更承認されている。

 

オミクロン株以降は、論文や研究にもよるが、重症化率がそれ以前(デルタ株以前)に比べて数分の一、例えば6分の1程度になっている、とされているものが多いように思われる。たとえば、

 

当院におけるデルタ株およびオミクロン株流行期毎のCOVID-19 入院症例の特徴

社団医療法人養生会 かしま病院

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhgmwabun/19/1/19_1/_pdf

 

といった論文でも、重症化する割合が、従来株0.6%からオミクロン株以降0.1%に激減している。

 

オミクロン株以降の重症化率が激減したとすれば、母数の重症者率が少ないから、重症化予防効果は重症化率ベースでいえば6分の1とすれば、わずか16%弱の人に有効だという程度にとどまるのかもしれないのである。

 

そもそも今はアルファ株~デルタ株といったものは流行せず、オミクロン以降の株しかないのであるから、始原株に対して95%の重症化予防効果があるという評価は、データの取扱いとして疑問なしといえない。

 

オミクロン株以降だから、そもそも1000人に一人しか重症化もしないが、それが16%程度抑えられるだけ、ということになりかねないようにも思われる。

 

そもそもオミクロン以降は、少々かぜのような症状が出ても(重症化しないのだから)、検査もせず病院にも行かずという人がほとんどであるから、病院での検査を受ける人を母数にして、オミクロン株にもかなりの重症化予防効果があるかのような印象を持たせることは、データの取扱いとして疑問が残る。

 

率直に、オミクロン株以降は、そもそも検査する者も病院を受診して陽性と診断される者も激減したと思われるので、実際の重症化率も、ワクチンの重症化予防効果も、オミクロン株以降は6分の1どころかもっと減少している可能性のほうが高いだろう。

 

それでは、ワクチンを接種する意味があるのか?という疑問も沸く。

 

2024年の医師のコロナワクチン、接種する/しないの二極化進む/医師1,000人アンケート2024年5月8日

https://www.carenet.com/news/general/carenet/58550

 

医師にアンケートをしても、2024年度にコロナワクチンを接種する予定かどうかを聞いた。全体では「接種する予定」が33%、「接種する予定はない」が41%、「わからない」が26%となったという。

 

既に、コロナ患者に日常的に接触する医師でも接種しない派が接種する派を超えてしまっているのに、一般の人がコロナワクチンを接種する意味があるのだろうか。

 

結論から言うと、統計的にメリットデメリットを比べれば、若者(といっても60歳未満)には、ほぼワクチンを接種する意味はない。

 

実は、年齢によりコロナの重症化率と死亡率には極端な差がある。

 

厚生労働省 (2023年4月版)新型コロナウイルス感染症の“いま”に関する11の知識

https://www.mhlw.go.jp/content/000927280.pdf

・ 重症化の割合は、50歳代以下で0.01%、60・70歳代で0.26%、80歳代以上で1.86%

・ 死亡の割合は、50歳代以下で0.00%、60・70歳代で0.18%、80歳代以上で1.69%

 

である。

 

つまり、50歳代以下では、重症化率は1万人に1人。死亡は0人。

 

これでは、そもそも、重症化予防のためにワクチンを接種する意味は、ゼロである。

 

60歳未満の人は、せいぜい3~6か月の間、感染予防効果が40~60%あるかどうかというために接種する、というくらいの動機付けしかない。

 

但し60代以上は状況が変わる。

 

これが60代・70代になると400人に1人が重症化し、550人に1人が死亡する。

 

80代以上になると、53人に1人が重症化し、59人が死亡する。

 

インフルエンザの重症化率は、

 

2022年3月2日

日本の医療データベースから算出された季節性インフルエンザの重症化率

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000906106.pdf

      死亡  重症  受診者数

60~64歳  0.06%  0.11%  1162300

65~69歳  0.12%  0.20%  1084800

70~74歳  0.23%  0.31%  804600

75~79歳  0.48%  0.52%  618400

80~84歳  0.97%  0.71%  491400

85~89歳  1.77%  0.87%  361900

90歳以上  3.06%  0.77%  265400

 

となっているので、60代・70代、さらに80代以上になると、新型コロナウイルスの重症化率や死亡率は季節性インフルエンザと同等かやや高い。

 

つまり、インフルエンザ用ワクチンを接種するなら、平行してコロナウイルス用ワクチンを接種するというのは、重症化予防効果を狙うなら、妥当な選択といえる。

 

しかし、コロナワクチンには、インフルエンザワクチンと比較にならない、強い副反応の問題がある。

 

インフルエンザワクチンによる副反応で重篤な事例に陥るケースは極めて少なく、数十万分の1以下だとされている。

 

令和元年シーズンのインフルエンザワクチン接種後の副反応疑い報告について

https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000681710.pdf

 

では、副反応疑い報告で、重篤副反応で100万人に1人。死亡では5650万人に1人。

 

インフルエンザワクチンはmRNAワクチンではなく、細胞内に入り込んでスパイクタンパク質を産生したりしない、従来型のワクチンである。

 

一方コロナウイルス用ワクチンについては、

 

2024(令和6)年7月29日 副反応疑い報告の状況について

 

第102回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和6年度第4回薬事審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催) 資料1-7

https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001281453.pdf

 

で、わかるとおりであるが、コロナウイルス用ワクチンは、2023年9月20日から2024年4月21日までの期間で、ファイザーが接種された回数が2500万回と、モデルナの300万回と比べても桁違いなので、あえてファイザーの数字を言うと(ファイザーからの報告数で)、重篤な副反応で12万人に1人、死亡では100万人に1.5人。

 

インフルエンザワクチンと比べれば、重篤者、死亡者とも1桁ないし2桁多い。10倍、数十倍多いのである。

 

ちなみにモデルナは同時期で、重篤な副反応で10万人に1.4人、死亡で25万人に1人である。

 

つまり副反応による重篤・死亡事例はファイザーよりモデルナの方がやや多い。

 

これは、副反応のキツさとパラレルであり、接種現場で、接種した者の感覚でも、医師側にも顕著な事実である。

 

だからこそ、ごく早い段階でモデルナは敬遠され、ファイザーの接種を希望する人が桁違いに多くなり、医療機関もファイザーを選択するところが圧倒的に多くなった。

 

3回目ワクチン接種時点で、抗体価の上昇値が、ファイザーは54.1倍、モデルナは67.9倍と言われていた。副反応もモデルナの方が高く出る。

 

ワクチン3回目 交互接種の効果と副反応 モデルナとファイザーの違い

https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20220221b.html

 

つまり、スパイクタンパク質を多く産生→抗体価が上昇する→副反応の重度化の確率が上昇する、という構造なのである。

 

いずれにせよインフルエンザワクチンと比べると、コロナウイルス用ワクチンは、ファイザー、モデルナともに死亡疑い事例は1桁2桁違いで多くなっていることがわかる。

 

それでは、レプリコンワクチンはファイザーと比べてどの程度抗体価の上昇を招くか。

 

令和6年度第2回予防接種に関する自治体説明会

新型コロナワクチン(製剤)に関するご質問への回答

https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001316061.pdf

 

の3P(1価ワクチンの場合。但しこの資料の1価ワクチンは始原株。今回のレプリコンワクチンはオミクロンJN1株による1価ワクチンである)を見れば、表なので正確な数値がわからないが、表を見る限り、一ヶ月後で中和抗体がファイザーに比べて1.4倍から2倍ほど、3か月後で2倍ほど、6か月後で2倍ほどと高い。

 

さらに、ごく最近、Lancet誌の姉妹誌の医学論文で、12カ月後の中和抗体の変化量が、従来型のmRNAワクチンと比較して、レプリコンワクチンで1.68倍(50歳未満)~2.14倍(50歳以上)だったということである。(現時点で論文の出典元が確認できないが、2024年10月20日付け日刊ゲンダイデジタルにおいて報道があった。)

 

つまり、レプリコンワクチンは、おそらく、12か月という単位で、細胞内で増殖したmRNAからスパイクタンパク質を出し続けて、抗体価を維持し続けるのであろう。

 

これらのデータから、レプリコンワクチンは、「ファイザーより長く効く」「12か月という単位で長く効く」という意味で、強力なワクチンであると言える。

 

しかし、裏を返せば、それだけ、長期間の間、mRNAがスパイクタンパク質を細胞内で産生し続けていることの証しでもあろうと思う。

 

レプリコンワクチンは身体の中でmRNAを複製する。だからこそ、抗体価が長い間高く持続する、ということを、レプリコンワクチンの長所だとしている。

 

一方で、Meiji Seika ファルマ社や厚生労働省は、mRNAはレプリコンワクチンでも長期間身体に残存しないから安全だと説明する。

 

この2つの説明には、どこかいいとこ取りのような、論理的な自己矛盾があることは、丁寧に考えればわかるだろう。

 

mRNAが増殖するということは増殖しないワクチンよりmRNAの減少する速度が遅いということであり、抗体価の上昇が長く続けば、免疫反応もそれだけ応答が続くわけであり、血液中のIgE4抗体(免疫寛容=免疫抑制をする抗体)を持続的に上昇してしまうことになる。

 

コロナウイルス用ワクチンがコロナ感染以上にIgE4抗体を上げること、頻回接種が問題であることは、以前から医学界から指摘されている。

2023/08/31
コロナ感染歴がないとmRNAワクチン接種後にはIgG4抗体が著明に増える

コロナ感染歴がないとmRNAワクチン接種後にはIgG4抗体が著明に増える

 

公益財団法人 東京都医学総合研究所

IgG4関連疾患の危険因子としてのCOVID-19 mRNAワクチン

https://www.igakuken.or.jp/r-info/covid-19-info182.html#r182

【mRNAワクチン接種による副作用】
SARS-CoV-2に対するmRNAワクチン接種によりCOVID-19の罹患率と死亡率は効果的に減少した。その一方で、アナフィラキシーショックや心筋炎などの急性期、亜急性期の有害なワクチン接種に伴った合併症はよく知られている。対照的に、mRNAワクチン接種による慢性期の副作用に関してはあまり注意が払われていない。

【IgG4の増加】
これに関連して、mRNAワクチン接種を繰り返すと血清中のIgG4が増加することは注目に値する。HIV、マラリア、百日咳などにおいてもmRNAワクチン接種の反復によるIgG4増加は以前より、知られていた。
一つのメカニズムとして、頻回のワクチン接種により血清IgG4が上昇し、IgG3に結合することにより、IgG3を介したADCCが阻害されると免疫寛容状態になり、SARS-CoV-2の免疫回避を促進するのではないかと考えられる。
それ以外にも、過剰のIgG4は、がんや「IgG4関連疾患」*4を促進することが考えられ、重要である。
【結果】
頻回のワクチン接種により血清IgG4が上昇し、SARS-CoV-2の免疫回避を促進するだけでなく、がんや「IgG4関連疾患」を促進する可能性がある。オミクロン株全盛時代の今、mRNAワクチンに安易に頼りすぎている現状を反省するべきかも知れない。

 

とある。

 

令和6年度第2回予防接種に関する自治体説明会

新型コロナワクチン(製剤)に関するご質問への回答

https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001316061.pdf

5Pを見る限りでは、レプリコンがファイザーより有害事象が多いかと言えば、抗体価がレプリコンワクチンのほうが多い割には不思議と、数字としては大差ないように思われる(不思議ではあるが、最初に接種されるmRNAの量が少なく徐々に複製されて増殖していくからであろうか?尚これは起源株由来のワクチンでの比較である)。

 

なお、コロナウイルス用mRNAワクチンの副反応の強さは、60歳未満までで高く、60歳以上になると自覚症状にもよるが、それより3分の2から半分程度である。

 

一方で、ワクチン有害事象が生じた時の死亡数は高齢者を中心に結構な数と率になる。

 

高齢者は、免疫反応が弱いので副反応が起きる確率は下がるが、スパイクタンパク質による血管や臓器障害が起きた場合の死亡率は高いという評価になるであろう。

 

さて、長々と書いたが、以上のようにみていけば、レプリコンワクチンを接種すべきか接種せざるべきか、大体の結論は見えてくる。

 

60歳未満の者は、オミクロン株以降は、有害事象が高齢者以上に起きる危険を侵してまでそもそもそもファイザーであってもmRNAワクチンを打つ必要は殆どなく、接種すべきでないように思われる(医療関係者や近親者に高齢者やハイリスク者がいてわずかでも感染させるリスクを避けたい人は別である。その場合でも、mRNAワクチンをさ避けてノババックスを選ぶという選択肢はある)。

 

60歳以上のハイリスク者、65歳以上の高齢者、特に80代以上の高齢者は、オミクロン株以降の重症化率は低いとは言え、感染した場合の重症化率と死亡率はインフルエンザより若干高い程度にはあるから、コロナウイルス用mRNAワクチンを接種する意味は、インフルエンザワクチン程度には存在する。

 

しかし、有害事象によるリスクが、インフルエンザワクチンより相対的にはるかに高い(といっても死亡まで至るリスクは絶対的には低いともいえる)。

 

ということである。

 

そうなると、結局のところは、接種する者各自の生活環境により判断することになるように思われる。

 

高齢者施設入所者などでは、インフルエンザワクチンとの比較でいっても、接種せざるを得ないだろう。

 

ただ、感染による死亡リスクが高くなる冬シーズンの期間有効なファイザー接種で十分だろうとは思われる。

 

ところで、レプリコンワクチンについては、mRNAの複製機能があるために、12か月という単位で、かなりの抗体価の上昇が持続することが判明してきている。

 

これでは、レプリコンワクチンを頻回接種してしまうと、抗体価の上昇を過剰に招くことになってしまうため、ファイザーなどに比べて接種間隔を開けなければまずいようにも思われる。

 

そして、頻回接種の問題(IgG4の増大による免疫応答の低下など)は、レプリコンワクチンについては、ファイザーに比べて追跡して確認すべき問題がより強く残る。

 

頻回接種自体、長期的な追跡研究がまだ未知数であるから、不安材料が残ってくる。

 

なお、レプリコンワクチン接種者についても、献血制限は、他のmRNAワクチン接種者と同様に48時間後からはOKとされている。

 

しかし、細胞内でmRNAが複製されてスパイクタンパク質が生成され抗体価が維持される期間が数ヵ月に及ぶのであれば、その間に輸血をしてよいのだろうか。

 

mRNAが増殖しないファイザー等のワクチンなどに比べれば、レプリコンワクチンの輸血禁止期間を同じ接種後48時間にとどめることは、違和感を感じざるを得ない。

 

レプリコンワクチン含めコロナウイルス用ワクチンは、接種する者がほとんど高齢者になっていくので、献血をする人も少ないだろう。

 

だったら、無理に48時間で揃えず、もっと長期の輸血禁止期間を設定してもよいようにも思われる。

 

なぜそれをしないのかが不思議ではある。

 

しかし、仮にそういった輸血制限をしてしまうと、「レプリコンワクチンを接種したら献血もできない」「輸血したら献血者からレプリコンがうつる」という風評被害を招きかねない。

 

だから、「ほかのmRNAワクチンと同様に減っていくので、安全だ」というのであるが、レプリコンはmRNAが細胞内で増殖することをセールスポイントにしているのであるから、同じように減っていくわけでは無いはずだという前提を無視しているようにも思われる。

 

そして、輸血によるmRNAや抗体の移行は、調査はされていないようである。

 

レプリコンワクチンについては、「汗や呼気から人から人に移る(いわゆるシェディング)」といったネガティブなネット情報が飛び交った。

 

その打ち消しにMeiji Seika ファルマが法的措置も辞さない姿勢を表明した。

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t344/202410/586081.html

 

私も、さすがに、汗や呼気からうつるかといわれると、「まあ無いだろう」と思う。

 

しかし、血管や血液細胞中、さらには臓器に、mRNAワクチンが入り込んでスパイクタンパク質を産生することは普通に起きるはずであるから(副反応、血管や臓器の損傷といった重篤事象、死亡事例はまさにそのために起きる)、レプリコンワクチンのmRNAが複製を続けている期間であろう48時間後くらいで献血したら、輸血した人に絶対うつさないとは、さすがに言えないと思われるのである。

 

輸血で少しくらいうつしてもそのmRNAの量は多くないから大丈夫だと言い切るのも、一つの見識ではあるが、そうは言えない大人の事情があるのだろうか。

 

mRNAが増殖しないファイザーなどのmRNAワクチンは、若者始め国民の大半が接種したから、当時、仮に献血禁止期間を48時間からさらに延ばせば、献血事業にいちじるしい悪影響が出てそれこそ医療崩壊となったであろう。

 

そういう意味で、48時間後からは輸血制限を解除するのは、コロナ禍で逼迫した献血事業を守るため、当時、妥協の選択だったのではないかと思う。

 

レプリコンワクチンについては、1パッケージ16人分と使い勝手も悪いので、接種する者は多くないだろう。

 

しかも高齢者がほとんどである。

 

レプリコンワクチンではmRNAが増殖することも考えれば、献血制限は延ばすのが、長期的な研究結果が出ていない間は、賢明なのでは無いかと思われるのであるが、そういう議論にはならないようであり、やはり、日本の厚生労働省や医療業界の議論は不思議だ、と思うのである。

 

国民の健康に関わるワクチン承認に、政策的妥協を重ねて緩めてきたのが、日本におけるコロナウイルス用ワクチンの歴史になってはいないだろうか。

 

有害事象による予防接種健康被害救済制度で、コロナウイルス用mRNAワクチンによるものとして認定されている件数は、過去の従来型ワクチンより桁違いに多い。

 

私の知人にも、コロナ禍中に、コロナウイルス用ワクチン接種の直後に死亡した高齢者、接種直後に脳梗塞になった同年代がいる。だから、レプリコンワクチンには、どうしても引っかかるのである。

 

残念ながら、レプリコンワクチンについて感じる疑問について、科学的知見がない、エビデンスがないといわれれば、科学的反証はできないのであるが、レプリコンワクチンには中長期的にも問題が起きえないということについては、その検証はされていないことも、事実であると言えるだろう。

 

レプリコンワクチンはやや不要不急の感があって、本来は、製薬会社側が、中長期的にも問題が起きえないということを立証すべき証明責任があるのではないだろうか。

 

というのがレプリコンワクチンの接種に対して私の感想である。

西村幸三

lawfield.com

京都・烏丸三条にある法律事務所を運営。ニュース・法改正・裁判例などから法務トピックを取り上げていきます。