関空行き「はるか」の終着駅が京都駅から山科駅になるプラス効果

なんと、2024年11月24日(昨日)のニュースで、特急「はるか」が、2029年予定で、京都駅の一駅東隣の山科駅を終着駅とすることになった。

 

現在、京都-関西空港駅を結ぶ特急「はるか」は、ほとんどの便が京都駅を終着駅としている。

 

ごく一部の「はるか」は琵琶湖線(東海道本線)の草津駅・野洲駅まで行くが、1日わずか3便であり、残りの27~28便は京都止まりで折り返す。

 

そして「はるか」は、京都駅では30番ホームに到着し、折り返しするまで結構な時間、車内清掃や整理のために30番ホームに停車する。

 

この30番ホームはもともと嵯峨野線(山陰本線)のホームであり、関西空港の開港に合わせて「はるか」が入線するようになったものの、それ以降も嵯峨野線の電車のホームとしても共用している。

 

しかし、なにしろ、「はるか」が日中のかなりの時間停車しているので、嵯峨野線の電車は、北側の残る31番、32番ホームに停車するものが殆どである。

 

「はるか」は8両または9両であり、30番ホームには8両の車両が停車できる。

 

嵯峨野線の特急「きのさき」「はしだて」も8両(4両+4両で連結)なので、もっぱら30番ホームに入線する。

 

そして31番、32番ホームはホームの長さが短く、6両または4両の車両が入線してくる。

 

近年、インバウンドの影響で、この嵯峨野線の「京都駅-嵯峨嵐山駅」間の混雑が日中でも寿司詰めのようになってしまっており、首都圏の地下鉄か、大阪市営地下鉄御堂筋線のような大変なことになってしまっている。

 

朝夕のラッシュは、正直乗るのも苦痛といわれている。京都の他の路線ではありえないような寿司詰め電車なのである。

 

インバウンド客が集中する理由は、外国で購入できるJAPAN RAILWAY PASSである。これは、JRの在来線が乗り放題なのである。

 

というか、JAPAN RAILWAY PASSは、新幹線の「のぞみ」「みずほ」だけは乗り放題でないが、それ以外の新幹線や特急も、ほぼ乗り放題である。

 

京都駅から嵐山に行くルートは、地下鉄→嵐電、地下鉄→阪急、といったルートもあるが、どちらも乗り換えが2回発生し、外国人にはわかりにくい上にキップや乗り放題カードの購入をしようにも、わかりにくい。

 

だから、外国人はJAPAN RAILWAY PASSでなくてもJR一本で行く方を選ぶのもやむを得ないところであった。

 

さて、これが、「はるか」に山科駅を終着駅にするようになればどうなるか。

 

はるかが大部分の時間占有していた30番ホームが空くことになるから、8両編成の車両が確実に入線できるのである。

 

つまり、嵯峨野線は、30番ホームに8両編成の車両(特急「きのさき」「はしだて」だけでなく、在来線も8両編成が可能)を入線させることができるようになる。

 

これによって、嵯峨野線の輸送量は、格段に向上することになるのである。

 

嵯峨野線の専用ホームが3本になり、特急または快速+快速+普通の3車両を常に入線できることになる。

 

嵯峨野線は、(知らない人も多いだろうが)京都駅構内が複線化できていない。

 

京都線すなわち東海道本線が複複線なので全く拡幅する余地がないのである。

 

つまり、なんと「京都駅-梅小路京都西駅」間が未だに単線である。

 

嵯峨野線の京都駅構内が単線というのがボトルネックとなってはいたが、さらに、「はるか」に貴重な8両編成の車両が入線できる30番ホームを日中の大半を占有されてしまうために、入線できる電車が少なく、嵯峨野線は、電車の増便もできず、輸送量を増やせないボトルネックに悩まされていたのである。

 

現在、京都駅では、「はるか」は、関西空港駅方面の場合は6番線または7番線に停車する。

 

ちなみに草津駅・野洲駅方面の「はるか」は、0番ホーム(敦賀行きサンダーバードが停まる一番北側のホーム。嵯峨野線ホームの東側に続いているホーム)に停車する。

 

0番線ホームは、JR京都駅の中央口(1F北側)改札口の目の前にある。

 

30番ホームは0番ホームの続きの西側に外れたところにあるから、「はるか」を降りた客にとっては、中央口へのアクセスが格段に便利になるし、地下東口の改札口から乗り換える地下鉄への動線も格段に短くなる。

 

これは、インバウンド客には、格段の動線の改善になると思う。

 

一点残念なのは、地下東口のコンコースから在来線ホームへの登りエスカレーターはあるのだが、下りエスカレーターがない。

 

但し、在来線ホームでは0番線ホームだけには地下東口に降りるエレベーターはあるから、「はるか」が0番ホームに到着し、現在のまま6・7番線から出発するということであれば、地下鉄←→地下東口←→「はるか」への動線は、やはり格段にスムーズになると思われる。

 

現在の京都駅での「はるか」の入線ホームは、30番ホーム、6,7番ホームとも、京都線の電車が入線するホーム(大阪方面へは2・3番線または山科方面へは4・5番線。ちなみに3番線は湖西線のホーム)と向かい合わせではない。

 

嵯峨野線の30番線は、地下鉄からだけでなく、京都線や湖西線からもまではるばる歩いて乗り換えないといけないので、ずいぶん楽になると思われる。

 

山科駅では現在、琵琶湖線・湖西線・特急「はるか」全てが、向かい合わせの1・2番線(大阪方面)か、3・4番線(滋賀方面)に停車するから、ホーム間の移動が生じない。

 

しかし、ニュースによると、山科駅の北側にホームを新設し、「はるか」の折り返しホームとするようで、折り返しの「はるか」に乗り換えるのにはホームの移動が生じることになる。

 

山科駅は、貨物線としても湖西線と琵琶湖線を通る貨物列車が大量に通過する大動脈であり、貨物専用の軌道が北側にも南側にも敷設されている。北側の方が余裕がある(4番ホーム沿いの軌道1本のほかに2本の軌道があり、貨物列車や湖西線へのサンダーバードなどが通る)のでそのうちの軌道1本をつぶしてホームを新設するのであろう。

 

ただ、あまり広いホームになりそうにもない。おそらく、在来線ホームよりはやや東側に「はるか」ホームを置くことになるだろう。

 

ただでさえエスカレーターの登り・下り・エレベーターを設置することになるから、果たして階段を設置できるのだろうか、もしかすると階段はなくエスカレーターだけになるのかなと、疑問が湧くくらいである。

 

ちなみに、「はるか」の自由席に座るにも、京都駅からより山科駅から乗る方がよほど座れる。

 

滋賀県の人にとって「はるか」の利便性はかなりあがり、利用者数も増えるだろう。

 

インバウンド客の動線としては、山科駅で降りて、乗り換えて地下鉄東西線で南に行けば六地蔵・宇治へと直行でき、東に行けば三条通りや御池通りに沿ったホテル集中地帯や観光地に向かえる。

 

なにより「はるか」の終着駅なのだから、宿泊や乗り換えの拠点にぴったりのように思われる。

 

山科駅は、名神高速道路の京都東インターチェンジから車で3~4分の立地で、山科駅でマイクロバスや観光バスに乗り替えるというパターンも出てきそうである。

 

山科では、名神高速道路の京都東インターチェンジに加え、地下鉄東西線、JR琵琶湖線・湖西線(新快速が停まる)・今後は特急「はるか」までが、短い動線で乗り継げることになる。

 

ちなみに、山科からは在来線の新快速で敦賀(北陸新幹線の現在の終着駅)まで1時間30分ほどであり、京都駅まで戻ってサンダーバードに乗るほどでもない。

 

もともと、山科駅から京都駅までは1駅5分、大津駅まで1駅3分、三条京阪駅(京阪電車乗り換え)まで地下鉄東西線で9分、烏丸御池駅(地下鉄京都線乗換駅)まで12分であった。

 

ちなみに神戸の三宮駅に60分、大阪駅には35分である。これらが全て乗換無しである。

 

京都市は、人口減少に苦しみ、遅ればせながら山科駅周辺を高度地区に用途地域を変更して、高層マンションを誘導し、京都の人口減少を食い止める政策の要として、山科地域を据えるようになった。

 

インバウンド客の乗り換えも便利、はるかの終着駅で空港直結、つまり外国人客からすれば宿泊・観光の拠点としてもわかりやすく便利となると、マンション人口のみならず、インバウンド客向けのホテルや低層の民泊も集積し始めると思われ、これまでの郊外の住宅地だった雰囲気は大きく変わってくるだろうと思われる。

 

関西空港に着いたインバウンド客にとっては、列車の行き先が「Yamashina」といわれてもよく分からないから「Kyoto,Yamashina」と表示されることになるのだろう。

西村幸三

lawfield.com

京都・烏丸三条にある法律事務所を運営。ニュース・法改正・裁判例などから法務トピックを取り上げていきます。