モペットは個人賠償保険が使えない(ファミリーバイク特約かバイク保険必須)

モペットという電動機バイク(ペダル付きの電動自転車)がある。

 

モペットは、足でペダルをこがなくても、電機だけで走行することができるし、足でこいでも電動アシストして走行できる。

 

このモペットは、足でこがなくても原動機だけでそうこうできてしまうということで、以前から、道路交通法上、「原動機付自転車」(原付バイク)に分類されている。

だから、人身事故を起こす場合に備えてかけるべき保険は、「バイク保険」である。

 

なお、いわゆる原付バイクなので、当然、運転免許も必要であるし、免許は携行しないといけない。

 

また自賠責保険も強制加入であり、加入しなかったり、更新時期にかけ忘れて走行すれば犯罪成立となる。

 

自宅に自家用自動車を保有している場合は、自動車保険に「ファミリーバイク特約」を付保することで、保険料は安く上がる。

 

事故の際の示談交渉や裁判に備えて、「弁護士費用特約」も(割安なので)かけておくことが必須である。

 

一方で、「電動アシスト自転車」は、普通自転車として扱われる。

 

あくまで、足でこぐことによって進み、そのこぐ力をアシストするだけだから、原動機付自転車ではなく普通自転車であるということで、普通自転車としての販売が認められいる。

 

運転免許も不要である。

 

電動アシスト自転車は、かけるべき保険は、「個人賠償責任保険」、またはその一類型の「自転車保険」である。

 

自宅に自家用自動車を保有している場合は、自動車保険に「ファミリーバイク特約」を付保することで、保険料は安く上がる。

 

やはり、「弁護士費用特約」をかけておくことが必須である。

 

このモペットについて、大阪地方裁判所令和5年12月14日判決において、個人賠償責任保険ではカバーできない(個人賠償責任保険の免責事由にあたる)という判断がなされた(判例時報2614号53頁)。

 

その判旨では、端的に、「モペットは、本件免責条項の除外事由である原動力がもっぱら人力である車両に該当するということはできない」と判断している。

 

以前は、ガソリンで走る原動機付自転車(原付バイク)しか存在しなかった。

 

しかし、それに対して、電動アシスト自転車が、メーカーがなんとか普通自転車として走れるようにしたいというアイデアと、中央官庁との折衝によって、原付バイクではなく普通自転車であるということで、販売できるようになった。

 

そのあとで、ガソリンなしで電気の原動機だけで、なおかつこいでもこがなくても原動機の力で走れるモペットが登場した。

 

中国で走っているバイクはもはや殆どが電動バイクである。

 

日本では、免許不要な電動アシスト自転車のように勘違いしやすいモペットが、「これは免許も必要な原動機付自転車ですよ」と言って売られている。

 

しかし、無免許の、子供や家族や友達まで、鍵さえあれば簡単に乗り回せてしまう。

 

そして、電動アシスト自転車と、モペット(原動機付自転車)の区別など、子供や、ヘタをするとメカにうとい女性、お年寄りには、ついていないことも多い。

 

モペットの無免許運転、飲酒運転で事故を起こせば、任意保険からは、対人・対物賠償保険は被害者保護から保険金が下りることが多いが、それ以外の運転者への人身傷害保険などは免責となって払われない。

 

だから、気をつけないといけないのだが、自家用自動車がある家庭では、ファミリーバイク特約も個人賠償責任特約も(弁護士費用特約も)付保しておくことによって、どちらもカバーされるので、つまりは、両方つけておかなければいけないということである。

 

なお、ややこしいのは、電動キックボードである。

 

電動キックボードの法的分類は2023年7月1日の法改正により変更された。

 

免許不要なのは、特定小型原動機付自転車 (特定小型原付)である。

定格出力0.6kW以下
長さ1.9m、幅0.6m以下
最高速度20km/h以下

なら、

16歳以上なら運転免許不要
ヘルメット着用は努力義務
である。

免許不要でもあくまで原付であるから、自賠責保険とナンバープレートは必須である。これが紛らわしい。

 

運転免許が必要になったのは、それ以外の、高出力の電動キックボードである。

これは、従前の原動機付自転車そのものである。
運転免許とヘルメット着用が必要
自賠責保険とナンバープレートは必須
である。

 

電動キックボードは、どちらにせよ、普通自転車には該当せず、電動キックボードに保険をかけるとすれば、ファミリーバイク特約かバイク保険になることに注意が必要である。

親が自家用車に任意保険をかけていることは普通だが、楽天やAmazonなどの通販で、子供や家人が電動キックボードやモペットを購入して、自賠責保険の登録は自分で勝手に済ませていた、という場合には、親の自家用自動車の保険に、ファミリーバイク特約をつけることを忘れていた、ということがありうる。

 

自転車事故でも、人身事故になった場合に、全身不随などになれば、何千万円、億単位の損害賠償請求がなされることは近年増えてきている。

 

電動キックボードはまた、道路の段差などで簡単に転倒して大怪我をしてしまう。

 

けっこうなスピードを出して道路の段差でつまづけば、前に放り出されることになり、頸椎骨折で全身不随などになれば、一生台無しであるが、運転者への人身傷害保険をかけてもいなければ、ただの自損事故であって、なんの保険給付もない。

 

電動キックボードは、電動アシスト自転車と同じだと思わず、知識をきちんともって、自衛しないといけないし、子供が勝手に乗れたりしないように鍵の管理も厳重にしないといけないのである。

西村幸三

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京都・烏丸三条にある法律事務所を運営。ニュース・法改正・裁判例などから法務トピックを取り上げていきます。