スッタ・ニパータより「こよなき幸せ」(中村元訳)
1.愚者に親しまないで賢者に親しみ、尊敬すべき人々を尊敬すること
2.喧噪すぎず人里離れすぎない場所に住み、功徳を積み、みずからは正しい誓願を起こしていること
3.深い学識があり、技術を身につけ、身をつつしむことをよく学び、みごとなことばを語ること
4.父母につかえ、妻子を愛し護り、仕事において秩序を守り混乱しないこと
5.人に施しをあたえ、理法にかなった行いをまもり、親族を愛し護り、非難を受けるような行いをしないこと
6.悪をやめ、悪を離れ、飲酒をつつしみ、徳行をゆるがせにしないこと
7.尊敬の気持ち、謙遜する気持ち、足ることを知る気持ち、感謝の気持ちを持ち、時折教えを聞くこと
8.耐え忍び、やさしいことばを語り、いろいろな自分と異なった考え方の人に会い、適当な時に理法についての教えを聞くこと
9.修養し、清らかな行いをたもち、聖なる真理を観察し、安らぎの境地を体得すること
10.世俗の事柄に触れても心が動揺せず、憂いなく、汚れを離れ、安穏であること
「スッタ・ニパータ」より「慈しみ」(中村元訳)より
1.能力があり、実直で、ことばはやさしく、柔和で、思い上がることのないようにしなさい。
2.足ることを知り、わずかの食物で暮らし、雑務を少なくし、生活もまた簡素であり、いろいろな感覚や器官がしずまり、聡明で、高ぶることなく、他人の家で貪ることがないようにしなさい。
3.他の識者の非難を受けるような下劣な行いを決してしないようにしなさい。一切の生きとし生けるものは、幸福であれ、安穏であれ、安楽であれ。
4.他人を欺いてはいけない。他人を軽んじてはいけない。他人を悩まそうとしたり怒りの想いをいだいたりして互いに苦痛を与えることを望んではいけない。
5.あたかも母がひとり子を命をかけて護るように、一切の生きとし生けるものに対し、全世界に対し、無量の慈しみのこころを起こすようにしなさい。
部派仏典(パーリ語仏典)の中でも、もっとも最古層に属するとされているのが、「スッタ・ニパータ」(経集)といわれる経典である(特に第4章、第5章が古いとされる)。
スッタニパータはいまや中村元訳の岩波文庫はじめ現在では数種類の訳が文庫本で読めるようになっている。
東南アジアの仏教諸国では、このスッタ・ニパータの中でも、これらの「こよなき幸せ」「慈しみ」の箇所が、日常となえる護呪経典として人々の生活の中に浸透している。
つまり、日本で言えば念仏の「南無阿弥陀仏」、題目の「南無妙法蓮華経」であったり、浄土真宗であれば正信偈、真言宗であれば理趣経のようなものである。