藤井聡太の棋譜は、29連勝中の途中から、ずっとチェックしてきた。
とにかく、面白いのである。
youtubeの棋譜解説や、さらにTVの将棋番組にAI優勢判断が普及し、特にAbemaTVで導入されてから、将棋番組の面白さが変わった。
AIによる最善手・候補手の有利不利が、素人にも一目でわかる。
勉強になる。
プロ棋士の大盤解説も、AIの候補手とプロ棋士の判断の違いを解説するので、いきなり深く読んだ解説が多い。
藤井聡太の将棋は、AIの候補手の中の最善手を指す確率が非常に高い。
そして今回のコロナウイルスでの休校期間中の研鑽の成果は目ざましい。
ラスボス3人(永瀬拓矢叡王・王座、渡辺明棋王・王将・棋聖、豊島将之竜王・名人)のうち、まずは永瀬拓矢に二度に亘って完勝。
渡辺明に棋聖戦で完勝。
残るは、豊島将之のみである。
豊島将之との過去4戦は、藤井聡太が攻めあぐねて手も足も出ないまま封じ込められた。
2019年といえば、永瀬・渡辺・豊島の3強のタイトル争奪戦がまさに壮絶で、竜虎相打つ、三つ巴の時代、という感すら呈していた。
この3人の精密で強靱な差し回しに、他の棋士でだれが勝ち越せるのかという印象だった。
藤井聡太はまだこのラスボスたちの域には及んでいなかった。
2020年7月の現時点で、藤井聡太は永瀬・渡辺を実力で凌駕しつつあることがほぼ確定した感がある。
豊島将之は、永瀬・渡辺と勝った負けたであり、藤井聡太とも力関係でいえば、もはや危うい。
藤井聡太は、タイトル戦や挑戦者決定戦といった過酷な真剣勝負が続き、十分な研究時間がとれてきたと思えない。
なぜここまで、積年の研究重視で無双のラスボスたちを撃破できるのか。
藤井聡太は、中盤で膨大な時間を使って長考を惜しまない。
膨大な手数を真剣勝負の対局中に読むことで、藤井聡太は、指しているうちにもどんどん研究し、成長しているのであろうと思われる。
「男子3日会わざれば、すなわち更に刮目して相待(たい)すべし」(三国志演義。呂蒙の言葉)という。
コロナウイルス騒動の巣ごもりの間、自分の実力をひたすら磨くことに努め研鑽に励んだ者と、そうでない者との差は、今さら気付いても最早取り返し得ないものとなっている。
それは将棋界に限ったことではないだろう。
みなさんは、コロナウイルス巣ごもり中、どれだけ自分の実力を高められただろうか。