スマホ契約プランはドコモの2980円ahamoで決まりか

NTTドコモが、激安プランを出してきた。

 

ahamo(アハモ)である。
https://www.ahamobile.jp/

 

特徴をいうと、

(有利な点)
・月2980円で、データ20GB。5分以内かけ放題

・その後も1Mbpsで通信可能

・5G通信をしても料金内

・月1000円プラスで、時間無制限かけ放題

・海外ローミング(現在88カ国。増加予定)のデータ通信も20GBの内。

 

(不利な点)
・docomo.ne.jpメールは使えなくなる

・オンライン契約限定(ショップでの契約不可)

・サポートも、ドコモショップ・電話はなし。Webでのチャットのみ

・継続利用期間はリセットされ以後に引き継がれない

・家族割などは一切リセットされ無効になる

・個人契約のみ。法人契約不可。(NTTグループカードなどで擬似的にまとめることは可能)

 

なんのことはない。言ってみれば、サブブランドやMVNOに似ている。

 

電話サポートもない、店舗サポートは勿論ない、というのは、MVNO以上に初心者無用かもしれない。

 

MVNOでも電話サポートくらい用意されているからである。

 

ドコモは、これは、リテラシー(デジタル対応能力)の高い、20代の若者向けのプランである旨いっている。

 

なんでこんな安値が実現できたのか。

 

要素はおおむね、3つある。

 

一つめは、菅義偉総理大臣と総務省による、携帯電話値下げ圧力に対し、ドコモが、3社寡占によって3社が営業利益20%を確保するという現状の、暗黙のカルテル状態を、トップ企業(NTTは政府が出資し政府が支配株主である)みずから打ち破る答えを出した、ということである。

 

二つめとしては、ドコモは、au、ソフトバンクに対し、純増数でも、乗り換えの転入転出でも、利益率でも、この10年ほど後塵を拝し、20代を中心とした若者から完全に見放されつつあり、いわば、シェアトップなだけのじり貧の3番手キャリアに成り下がりつつあったことの挽回策である。

 

ドコモは、若者を取り戻すための強烈な施策として、au、ソフトバンクに、他社がそうそう容易に踏み出しがたいレベルの戦争をしかけたのである。

 

三つめ、これが大きいが、ショップを利用しないユーザーにはSIMを安く提供するという戦略である。ここが他社がそう簡単に戦術上踏み出しがたいポイントである。

 

ドコモのビジョンは、もはやショップというレガシーなサポートサービスは無料ではない、ショップでのサポートを必要とするユーザーはその分ショップの人件費と賃料や設備費用を負担して下さい、当然ショップを使う分料金は上がりますよ、というものである。

 

これは、ある意味、割り切りがすごい。

 

実は、最大のすごさは、この、三つめの点にある。

 

これを機にユーザーがahamoに乗り換えていけば、販売代理店の販売手数料でも特に継続手数料がたちまちのうちに大きく減少するだろう。

 

ユーザーがショップに行かなくなるので、販売ショップの来店者数も減少する。

 

販売ショップのカットも政策として可能になる。

 

ahamoに到っては電話サポートまで廃止してしまった。

 

その店舗賃料・店舗人件費・電話サポート人件費・販売代理店の利益分が、不要となることで、浮いたコストをカットすることで、月2980円を実現したわけである。

 

販売代理店側から見れば、不要な中間コスト扱いと烙印を押されたわけで、特に既存ドコモユーザーがahamoへ乗り換えられれば、たちまち、その継続手数料が売上からカットされてしまうわけで、断末魔ものである。

 

ケータイショップなるものが、レガシーな過去の遺物として、決定的に退潮傾向となるひきがねを、ドコモが引いた感がある。

 

そもそも、ケータイショップは、この世でもっともデジタルなツールを販売しているにもかかわらず、対面販売・対面サポートにこだわることにそもそも無理がある。ケータイショップの退潮はいずれ遠からず訪れることが見えていた。

 

「MVNOはショップがないから不便」とネガティブキャンペーンを貼ってきたマスコミも、実のところ、頭がレガシーなアナログ水準のままであり、ほかならぬ、大スポンサーである3大キャリアの、いわば走狗となりさがっていた。

 

菅義偉総理大臣と武田良太総務大臣とNTTドコモが、販売代理店の既得権益をぶち破ったわけである。

 

リテラシーのある若者は大挙してahamoに流れるであろう。2980円か3980円で、大満足である。

 

一方でリテラシーのない若者も実際には多い。

 

ケータイ時代からの名残でスマートフォンはショップで長期保証を付けて買うものだと考えているような若者もいるだろう。

 

あるいは、iPhone派のなかでも、SIMフリーiPhoneでいいとならずショップで3年4年縛られようと3大キャリアのiPhoneを買うことに安心感やブランド価値を見いだしている層。

 

家族割りだとか継続割引をリセットしたくないという、あまり合理性のないとらわれのある層。

 

キャリアメールが必要だという層。

 

こういう層に属すれば、若者であっても、ショップのサポートを余分に月数千円払ってでも、3大キャリアの既存契約を継続するわけであろう。

 

しかし、そういった層は、やがて、いや、あっという間に、レガシー化し、化石扱いを受けることになるだろう。

 

現時点でも、高齢者層やビジネスマンは、実は結構MVNOを使っている。

 

年配層にしても、昨今のガラケーユーザーのスマートフォンへの乗り換えは、3大キャリアからMVNOへの移行がかなり多い。

 

私などは、そもそもスマートフォンを3大キャリアで契約したことがない。

 

私の構成は、Y!Mobileのガラホ(PHSからの移行プランで、時間無制限かけ放題月980円+キャリアメール300円)+OCNモバイル(旧プラン3GB1800円)+楽天モバイル(MNO。1年無料。テザリングでモバイルルータ替わり)の3台持ちである。

 

既にMVNOを使っている者、iPhoneにこだわりなくAndroidで十分と考えている者は、3大キャリアにおよそとらわれる理由がない。

 

SIMフリースマートフォンをネットで買えば良い。

ショップに行くより安いし早い。

長期保証などいらない。

何年かの間にバッテリーはへたるし落として割れたりすれば有償修理になるから買い換える方が安い。

壊れる前にSIMフリースマートフォンをネットで買って移行しておけば予備機もできて安心。

と、割り切っている。

 

SIMフリースマートフォンやMVNOを使っている層は、実は、3大キャリアのショップ派より、ITリテラシーが高いことも多いといってよい。

 

チャレンジングでITリテラシーのある、経済的富裕層の方が、MVNOやサブブランドに敏感で早々に移行しているともいわれるくらいである。

 

一方で、あまりリテラシーのない高齢者も、ドコモ、au、ソフトバンクのショップでガラケーからの移行時に勧められる、あまりに高額なスマートフォン利用料金の月額料金に驚いて、多くが、月1000円ちょっとで契約できる、イオンモバイルに飛びついている。イオンは地方のどこにでもあるし、イオンに行けば対面で契約できるし、ショップで最低限の設定もしてくれるからである。

 

高齢者でも、一度LINEくらいまでを周囲に頼って設定してもらえば、MVNOでもあとは変わらない。

 

子供や孫や周囲の者が手伝えば大抵なんとか使えているものである。

 

だからMVNOのユーザーの満足度はだいたいにおいて極めて高い。

 

docomo.ne.jpなどのキャリアメールは、ビジネスマンなどでは、無くしたくない(キャリアメールしか連絡がとれない相手もいるから)という人もいるが、さすがにこのところキャリアメールでのやりとり自体がごく少数となり絶滅気味である。

 

無くしたっていいという割り切りを持ってしまえば、実は簡単になくせる。

 

キャリアメールしか連絡を取れないような相手でも、昨今では、LINE、facebook messengerその他のSNSでつながりを代替できるようになっているからである。

 

また、電話番号だけわかっている相手であっても、最近、ショートメールの仕様がRCSに拡張されつつある。

 

Googleが、ショートメールで大きなファイルを受送信できるRCSを、標準採用しつつある。

 

AppleがGoogleに後追いしてRCSに対応すれば、AndroidとiPhoneの垣根はなくなり、キャリアメールは本当に不要になる。

 

もう、すぐそこに、その未来は見えている。

 

au、ソフトバンクは、ドコモに直ちに追随できるであろうか。

 

おそらく、追随するであろうが、au、ソフトバンクにしても、レガシーな販売代理店切り捨てという政策大転換に踏み出す、という状況になる。

 

au、ソフトバンクのほうが、実は、販売代理店の影響力・発言力は強い。

 

au、ソフトバンクが、簡単に販売代理店切り捨て政策をとれるのだろうか。

 

au、ソフトバンクがこれまでドコモを追い上げ、追い詰めてきたのは、au、ソフトバンクの販売代理店の推進する強引な(規制をすり抜け続けた?工夫を凝らした?あこぎな?)販売手法によるところが大きい。

 

ユーザーが不要なオプションを5個10個、月何千円分も付けられたり、3年縛り契約、4年縛り契約、端末一括0円、キャッシュバック10万円、といった、ある意味ユーザーへのまやかしを含んだ、ゆがんだ販売手法で、ユーザーを他社から乗り換えさせ、自社に縛り付ける手法は、ソフトバンクやauが、積極的に推進し、販売代理店の積極性(ずうずうしさ)という点でみても、ドコモを遙かに凌駕していた。

 

販売代理店からすれば、継続手数料確保のため、ユーザーが乗り換えにくいように複雑な条件で縛り付ければ縛り付けるほど、儲かる仕組みである。

 

リテラシーの乏しいユーザーを縛り付けて客単価(ARPU=  Average Revenue Per User)を上げ続けて儲ける仕組みを構築する、販売代理店とキャリアの共存共栄体制が、ソフトバンク、ついでauと、顕著であった。

 

そういういかがわしい販売手法は、日本の携帯電話料金を高止まりさせる要因であるとして、繰返し批判され、規制されてきたが、ソフトバンク、auが常にそれをかいくぐる販売手法を考案して、歪んだ構造を維持してきた。

 

その場面において、ショップでの対面での、こういった契約への誘導は、不可欠であった。

 

ドコモはそういう販売手法に露骨に追随しなかった分、乗り遅れて次第にじり貧に陥った。

 

ときに悪徳商法とまで批難される、こういった携帯電話販売代理店の販売手法は、ショップを介さない、ネット契約オンリーのドコモのahamoにおいては全く成立しえない。

 

今後、ますますのデジタル・ネイティブの拡がりとともに、3大キャリアの販売代理店は、これまでのMVNO普及・今回のahamo開始による継続手数料の減少に始まり、こういったあこぎな販売手法ごと、じり貧となり、いずれ、社会全体のユーザー側のリテラシーの全体的高まりによって不要感が拡がり、存在意義の乏しい中間コストとして、じわじわと葬られる運命にあるのだろう。

 

おりしも、恒例のケータイ3月商戦が、もう目の前である。3大キャリアにとっても、販売代理店にとっても、最大のかき入れ時である。

 

そこに、ahamoがぶつけられた。

 

au、ソフトバンクの選択は本当に難しいものになる。

 

なにしろ、au、ソフトバンクはサブブランドのUQ MobileやY!Mobileですら実店舗がある。

 

au、ソフトバンクが、ネット契約オンリーの料金プランをドコモ並に格安に打ち出せば、サブブランドののUQ MobileやY!Mobileの販売代理店も、この3月商戦にあたっては、切り捨てられる対象です、と宣言するに等しいのである。

 

ただ、このネット契約オンリーの格安プランというのは、MVNOの本質がもともとそうコンセプトであって、時代の趨勢といわざるをえない部分がある。

 

なにしろ、日本国政府は、フィンランドのように社会の「電子政府」への移行を標榜するわけで、そんな社会においてケータイショップでの対面販売なるものがインフラとして必須なはずはない。

 

私はといえば、ケータイのショップには3年ほど足を踏み入れていない。

 

最後は、Y!mobileのPHS(月1500円時間無制限かけ放題+メール無制限)→ガラホ(月980円時間無制限かけ放題)への移行契約の際だったと思う。

 

混雑し、待たされ、不快な空間、できればネットで済ませたいが契約条件などが複雑でシステム上できないリクエストがあるのでショップに行くよりしようがない、というのが、私にとっては3大キャリアのショップのイメージであった。

 

なお、ahamoでも、スマートフォン端末販売自体は、おそらく3月のサービス開始までに追って開始するだろうと思う。

 

MVNOのOCNモバイル(NTTコミュニケーションズ)の併売するスマートフォンの値引き幅は大きく、大人気であるから、ドコモがこの手法を採用しないはずはない。

 

ドコモはグループ傘下同士のOCNモバイルの販売機種をそのまま共同仕入れしてサイトで併売すればいいだけであり、この分野でのNTTグループの取扱台数のアドバンテージは強力である。

 

iPhoneの仕入も、いずれドコモとOCNモバイルの共同仕入れにすれば、OCNモバイル側にもスケールメリットが出てくる。

 

今回のahamoには、NTTそして政府が見る、日本社会の未来が、透けて見えるのである。

 

ところで、MVNOへの回線貸出料金は、ahamoによって明らかに割高になってしまっており、今年から3年をかけて予定していた回線貸出料金の値下げも、大至急前倒しして実施しないと、MVNOは壊滅してしまう。

 

その手当まで、総務省は手が回っていない。

 

日本通信がドコモに対して申し立てた回線貸出料金の値下げに関する裁定についても、裁定が出てはや半年経っているのに、まだ、実施に到っておらず、ほとんどのMVNOは値下げに踏み切れないでいる。

 

ドコモの果断さによって、総務省のスピードの遅さが、悪目立ちしてしまっている状況である。

西村幸三

lawfield.com

京都・烏丸三条にある法律事務所を運営。ニュース・法改正・裁判例などから法務トピックを取り上げていきます。