2021年1月29日の発表で、楽天モバイルのプランが4月1日から値下げされることが発表された。
正確には、まだ楽天モバイルのユーザーはほぼ全員が、2020年3月以降の1年無料期間中だから、まだ通信料は払ったことがない人がほとんどだろう。
各ユーザー、1年無料期間後に払う通信料が、下がるのである。
これまでは、1年無料期間終了後、月2980円、通信料無制限、Rakuten-Linkアプリで通話無料の、ワンプランであった。
値下げ後も、ワンプランは変わらない。
価格が下るのは、通信料が少なかった月である。
通信料が1Gまでの月は、月額0円。(但し1契約目だけ。2契約目からは980円)
1G~3Gまでの月は、月額980円。
3G~20Gまでの月は、月額1980円。
20Gを超えた月は、月額2980円である。
ちなみに、Rakuten-Link通話については、データ量にカウントされない。低速モード(1Mbps)に切り替えても上記の区分けのデータ量はカウントされる。
つまり、20G使わなければ、1980円である。
なんとサイフに優しいプランだろうと思う。
ちなみに、自宅に光ファイバーなどによるWifi環境があれば、自宅にいる間はギガ消費ゼロである。つまり月額0円。
光ファイバーがない家庭であっても、家族が楽天モバイルに複数契約していれば、1台に他の端末はテザリングで繋いでおけば、自宅にいる間はギガ消費ゼロになる。
Wifi環境が整った職場であれば、社外に持ち出さず、Wifiに接続しながらRakuten-Linkで通話するなら、月額0円プランなのに、かけ放題である。
ここまで安いと、ドコモ、au、ソフトバンクなどで契約する意味はほとんどなくなってしまう。ahamoを初めとした3大キャリアの2980円プランはあえなく打ち砕かれた感すらある。
楽天モバイルユーザーは、楽天市場などでのポイントアップもある。
現在申込みユーザー数は220万人とのことであるが、今から申し込んでも、300万人までに入れば、1年間無料である。
目端が利くユーザーは、既にセカンド端末、サード端末として便利に使って1年間無料を謳歌している。
楽天モバイルの最大のデメリットは電波状況であるが、既に市街地ではそんなに悪くなくて、ロードマップでは2021年夏ころまでには市街地の大半で整備が前倒しされており、不通エリアはかなり減ると思われる。
私の事務所のビル(鉄筋コンクリート造)では、ビルの一番奥の会議室までいくと、電波が入りやすいのはソフトバンクと意外なことに楽天モバイルの電波であり、ドコモとauの電波はかなり入りにくい。
住宅地などでもこの1年無料期間の間に、相当整備されることが見込まれる。
楽天モバイルが1年無料期間お試し期間を設定したのは、基地局の整備にかかる期間にもユーザーを集め、試行錯誤を重ねるためであった。
この1年間、楽天モバイルのユーザーになった者は、楽天モバイルの実験につきあってきたようなものであるが、ほとんどの楽天モバイルのユーザーはセカンド端末・サード端末として楽天モバイルを契約しているはずである。
私自身、楽天モバイルの契約をしたのは、コロナウイルス禍から急遽とりかかったテレワーク体制の整備の一環としてであった。
なにしろ、申し込んで2日後に届いたのだからありがたかった。
この1年間弱、モバイルルータとして、楽天モバイルのSIMは、まさしく最強であった。
多くのユーザーは、1年無料期間後は、ファースト端末・セカンド端末として持っている3大キャリア・MVNOのSIMと、どちらを選ぶか、迷っていたはずである。
なにしろ、日本の携帯電話契約数は1億8000万台に達しており、楽天モバイルは、メイン端末ではなくセカンド端末として選んでもらえるだけでも、膨大な市場を獲得できる可能性があるのである。
楽天モバイルとして、1年無料期間後のユーザー離れの恐れに、焦りがなかったはずはない。
ahamo、povo、Softbak on LINE(2980円+かけ放題1000円)とどちらがよいかといえば、2021年3月か4月の時点で選ぶなら、電波状況からいえば3大キャリアになる可能性はあるし、通信料からすれば、Wifi環境外で大して使わないならMVNOで十分であるとなる可能性もある。
短期的な視点では、楽天モバイルは、この3月、4月にお試しユーザーの大量解約が生じないよう、今回の値下げを打ってきたのである。
既存ユーザーからすれば、お試し期間が過ぎても、もう少し楽天モバイルエリアが整備されるまでの間、SIMを寝かせておくか、Wifi下だけで運用すれば、月額0円だから、解約する理由がないのである。
新規ユーザー獲得という面から見ても、3大キャリアユーザーのガラケーからの乗り換えプランよりも条件が緩く安いし、MVNOユーザーの取込みも可能である。
日本のスマートフォンユーザーの大半のギガ消費は月間3Gか5G以内におさまっており(光ファイバー・Wifi環境下にあればそうであろう)、そうすれば、980円かせいぜい1980円までなのである。
Wifi環境なしのユーザーはさすがに月額1980円か2980円になっていくと思うが、それでもMVNO並みかそれ以上に安い。
楽天は、このプランを、もちろん、出血価格で提供している。
しかし、楽天は、このコロナウイルス禍において、通販事業もクレジットカードなどの金融事業も絶好調であり、その余力をモバイル事業につぎ込んでいる。
3大キャリアには、通信事業がメインの事業構造であり、楽天ほどに周辺事業の厚味がない。
今回のワンプラン値下げで、楽天が、不退転の姿勢で3大キャリアと対抗してモバイル事業を展開することをコミットメントしたことが、はっきりしたように思われる。
楽天モバイルは、12月1月にかけてガリバー3大キャリアから足並みを揃えて2980円プランを仕掛けられて、これに対抗する答えとして、追随値下げを不可能なところまで価格競争をしかけたのである。
戦慄しているのは、3大キャリアの側であろう。
追随値下げは、ほぼ不可能であろう。3大キャリアには、2980円プランが、ほぼ原価レベルと思われるからである。
潰しに行こうにも、潰しに行けないくらいに、楽天の側に厚味があって、不退転のコミットメントをされてしまったわけである。
3大キャリアは、通信業界で寡占に甘んじて極めて高い営業利益率を維持するガリバーであったが、「土管屋」から抜け出せない井の中の蛙感が長年の課題であった。
それが、楽天というネット通販や金融事業のガリバーから、寡占市場の金城湯池を、踏み荒らされようとしている。
楽天モバイルは、フュージョンコミュニケーションズ統合以来IP電話事業に長けており、携帯電話の音声卸役務においても3大キャリアに次ぐ「土管屋」であり、Rakuten-Linkでの通話料をかけ放題無料にしても、音声役務についての原価ベースでの出血は最小限にできるという見込みを立てているのであろう。
この1年間の、総務省による、MNP手数料廃止、SIMロック禁止などの規制緩和措置によって、キャリア間の乗り換えは極めて簡単になってしまった。
なにしろ、ユーザーからすれば、3大キャリアの2980円プランと楽天モバイルの間で契約をお試しに行き来しても、ほとんど契約事務コストはかからない。
Rakuten-Link対応スマートフォンでなければRakuten-Linkでの発信などに支障が出るのがデメリットであるが、楽天モバイルは、実質無料端末(機種端末代は払ってもらった上で同額以上を楽天ポイントで還元している)を用意している。
ユーザーの側としては、楽天ポイントで返ってくるなら実質無料と同じであり、これは3大キャリアではなかなか真似が出来ない(出来るとすればYahoo!ショッピングポイントを持つY!mobileとソフトバンクくらいであるが、楽天ポイントの方がアドバンテージがある)。
巨大企業の、ガリバーVSガリバーの、すさまじい競争を、私たちはいま目の当りにしている。
この競争は、至極、消費者利益に適合している。
一家の携帯電話料金の支出が2万、3万それ以上、1人でも1万以上といった状況で家計が圧迫され破綻していく家庭を多数見て来て、弁護士としてその改善をアドバイスしてもなかなか進まないで、理不尽な思いをしてきた者としては、胸をなで下ろすような気持ちである。
しかしながら、今回の楽天モバイルについても、こういった消費者利益を享受するには、自分で調べて理解して、リテラシー向上に取り組むことが、賢い消費者として求められるのである。