ナンバーディスプレイ無料化

NTT東日本、NTT西日本のナンバーディスプレイ(月額440円)、ナンバーリクエスト(月額220円)が、高齢者向けに無料化されることになった。

 

特殊詐欺対策としてである。

 

但し、条件があって、契約者が70歳以上か、契約者の同居人に70歳以上の人がいる場合である。

 

NTT東日本 ナンバー・ディスプレイ
https://web116.jp/shop/benri/number/num_00.html

 

NTT西日本 NTT西日本が特殊詐欺対策をサポートします
ナンバー・ディスプレイおよびナンバー・リクエストの高齢者無償化の適用条件等
https://www.ntt-west.co.jp/product/sagitaisaku/

 

無償化の申込みは思ったより簡単で、NTT西日本であれば、ウェブサイトに記載されているフリーダイヤル(NTT西日本 特殊詐欺対策ダイヤル 0120-931-965)に、その加入電話から電話すれば、住所や氏名などを伝えれば、申込みが完了する。

 

2023年5月1日から無償化は始まっているが、申込みが必要である。当然に無償化されるわけではないので注意が必要である。

 

実際に高齢の家族のためにその自宅の固定電話から電話したのだが、10分ほどで会話して手続きは終わった

 

ウェブサイト上からでも、無償化申込みは可能であるから、遠隔の親族のためにも手続きは可能と思われる。

 

自営手段として、高齢者の親族や、知人がいる場合は、ナンバーディスプレイ、ナンバーリクエストの設定をしておくように勧めてあげてほしい。

 

町内会の回覧板で回してもいいくらいだと思うのだが。

 

なお、NTT西日本の上記URLをみればわかるが、無料で、特殊詐欺対策アダプタ(通話録音機能付き端末)を設置してくれるというサービスも存在する(5000名上限)。

https://www.ntt-west.co.jp/product/sagitaisaku/

 

このアダプターで、あちこちの高齢者に特殊詐欺を掛けてくる電話番号を収集し分析し、電話契約者や家族にメールや自動音声電話で警告する、という仕組みである。

 

NTT東日本NTT東日本は、いまや、電話を利用した特殊詐欺対策の先頭を切っている会社といってもよい。

 

ちなみに、固定電話の特殊詐欺に利用されている回線を最初に民間企業の取り組みとして実行したのは、NTTコミュニケーションズである。

 

NTTコミュニケーションズも、NTTグループである。

 

NTTコミュニケーションズは、渋る総務省を賢明に説得し、利用停止できるよう約款を改正し、特殊詐欺に使われる(転送電話の踏み台にされる)固定電話回線の撲滅活動に取り組んだパイオニアである。

 

これまで、私は、社会貢献活動として、日本弁護士連合会の民暴対策委員会での活動として、約20年近くにわたり、犯罪に利用される携帯電話・固定電話・IP電話・転送電話などの回線の利用停止の法制度整備の提唱を続けてきた。

 

その中で、ナンバーディスプレイ、ナンバーリクエストサービスは、わずか数百円とはいえ、有料であることで、高齢者が自宅の固定電話にオプションで付加して利用することは意外に少なかったのである。

 

特殊詐欺対策機能付きの固定電話機も今では普通に販売されているが、電話機だけを替えても、ナンバーディスプレイ、ナンバーリクエスト機能をつけないと、効果は何割か減少するのである。

 

それで振り込め詐欺の温床となってきた残念な経緯がある。

 

ナンバーディスプレイの無料化の要請は、私も、弁護士会の活動の中で、一度ならず関わって来たが、NTT東日本NTT東日本も民間企業であり、法規制により無理に無償化を求めることは難しかった。

 

監督官庁である総務省が、それ以上に、通信手段の悪用に対する規制や法執行に対しては極めて無関心・不熱心だった。

 

憲法の「通信の秘密」を理由にして、木で鼻をくくったように、通信手段を利用した犯罪に対する規制に頑として反対するか、極めて謙抑的であるべしという姿勢を、省庁間折衝において堅持してきたのである。

 

そのバランスは、謙抑的を通り越して、バランスが悪すぎ、犯罪者の味方になっていると批判されてもしようがないレベル、問題意識の欠如、だったと思われる。

 

たとえば、通信傍受の要件すら、諸外国に比べて日本はあまりにも厳格に過ぎた。

 

結果的に、日本では、携帯電話・IP電話・転送電話による悪用が野放しになってきたのである。

 

日弁連民暴委員会からの海外視察として、手弁当で、米国のFBI(連邦捜査局)、DOJ(司法省)、FCC(連邦通信委員会)、FTC(連邦通商委員会)などに訪れて感じたのは、米国の政府機関の官僚たちの、国民の安全な生活を守る、悪い奴らを絶対に許さない、犯罪収益は徹底的に剥奪する、そのために法制度やシステムを官僚の自分たちが作り上げるのだという、確固たる信念、使命感であった。

 

数年前、日弁連民暴京都大会の実行委員長として、「犯罪インフラの撲滅」をテーマに大会を開催した際に、NTTコミュニケーションズの固定電話回線利用停止活動の経緯に触れた。

 

NTTコミュニケーションズが、民間企業であるにもかかわらず、被害者抑止の先頭に立って、政府機関を巻き込んで、犯罪利用電話の撲滅を目指す、その信念と使命感に、強く感銘を受けたことがあった。

 

さらに時間がかかって、日本の政府機関の意識も多少は進んだといえるだろうか。

 

私が、日弁連民暴委員会を舞台に、犯罪に利用される電話の利用停止を提唱しはじめたのは平成14年(2002年)、携帯電話不正利用防止法ができたのが平成16年のことであるから、20年かかって、ようやく、社会の意識が追いついてきて、犯罪撲滅、被害者救済の必要性が、健全に議論されるようになったと思われる。

 

ひとことに、ナンバーディスプレイ無料化、といえば、大した事ではないかもしれないが、これですくわれる人は数知れずおり、長年にわたり、遠隔地から詐欺を行う悪どい連中をどうやって撲滅するか、ライフワークとしてきた者としては、感無量の施策となった。
繰り返すが、申込みをしないと無料にならないので、申込みを忘れないようにしたい。

 

また、NTT東日本、NTT西日本、NTTひかり電話などNTT系の電話サービス以外の契約については、今回の無償化の対象外である。

西村幸三

lawfield.com

京都・烏丸三条にある法律事務所を運営。ニュース・法改正・裁判例などから法務トピックを取り上げていきます。