楽天モバイルは最強になったか

最初に、結論としては、楽天モバイルは、サービスとしてはほぼ最強になったと言ってよいと思う。

 

楽天モバイルは、2023年5月12日(金)、プレス発表をおこない、それによると、6月1日からエリアカバー率99.9%(従前98.4%)を一気に達成し、auローミングも無制限、(従前は5GBまで。以降はスピードが1Mbps)にする。

 

価格は据え置き(上限2980円+税。ちなみに3GBまで980円+税、20GBまで1980円+税)

 

Rakuten Linkアプリで、電話はかけ放題。

 

エリアカバー率99.9%というのは、ドコモ、au、ソフトバンクの、プラチナバンド(800~900Mhzの低周波数帯)でカバーするエリアのカバー率と等しい。

 

これは、auのプラチナバンドを全国でローミングし放題だから、当然そうなる。

 

楽天モバイルでは、田舎(山の上、キャンプ場、山間部など)では既に5月まででも、auのプラチナバンド(バンド18・バンド26)に対応していたので、電話やネットが不通になるということはまずなかった。

 

だから、田舎では、楽天モバイル=auプラチナバンド相当、というのは、既に以前からそうだった。

 

もっとも、田舎だと、ドコモ電波のほうがau電波よりもカバー範囲が微妙に広いことが多いが(逆にドコモ電波のほうが届かなくてau電波が届くことも結構あるが)、少なくともソフトバンクのエリアよりは明らかに広いので、既に「ほぼ最強」であった。

 

今回、エリアカバー率を98.4%から99.9%に一気に引き揚げたというのは、都会(東京・大阪・愛知など)の、わずかな穴を埋めたのである。

 

具体的には、東京・大阪・愛知などで、コスト面からauローミングを廃止していたのを、再び、auとの契約を見直して、再開したのである。

 

そのため、地下鉄・地下街・ビルの奥・店舗内など、楽天モバイルにはなくauにはある、都心部の地下街などのミニ基地局(ドコモ・ソフトバンクと3社共用のことが多い)、フェムトセル(店舗が設置するさらにミニな基地局)に、楽天モバイルがこれまで繋げられなかったものが、不自由なく使い放題で接続できるようになったのである。

 

ユーザーの側からすれば、楽天モバイルが一番繋がりにくいとされてきた都会の地下鉄・地下街・ビル奥・店舗でau同等に繋がるのだから、ほぼ弱点はなくなった。

 

それでいて通話はかけ放題。

 

ギガとしても、ほとんどのユーザーは20GBまで1980円の範囲で収まる。

 

ヘビーユーザーでも、2980円。

 

PCなどへのテザリングもし放題。

 

また、楽天モバイルは、Wifi接続すれば、Wifi経由で、Rakuten Link での通話できる。

 

つまり、ビル奥、店舗などで、たとえauのプラチナバンドがつかめなくても、Wifi接続経由でRakuten Linkで、携帯電話の通話ができてしまうから、勤務地がビル奥の事務所や店舗にあってauやドコモが繋がらなくて困っているユーザーには、au、ドコモ以上に「最強」の選択肢である。

 

確かに、これは、最強だというしかない。

 

一人暮らしなら、家に光ファイバーはもう要らない、楽天モバイルだけ持っていればいい、とも言える。

 

なぜこんな優れた安価なサービス改訂ができたか。

 

それは、楽天が、auからのローミング単価を、従前の1Gで500円という、暴利と言ってもいい単価から、大幅に引き下げることができたからである。

 

携帯電話の電波の卸元である3大キャリア(ドコモ、au、ソフトバンク)は、卸先であるMVNO(OCNモバイルやmineoなど)には、安い単価で回線を貸し出す義務がある。

 

しかし、楽天モバイルは、MVNOから脱却して、卸元であるMNOに業態転換した。

 

そのため、3大キャリアは、楽天モバイルに対して、安価な回線貸出し義務を負わなくてよくなった。

 

MVNO時代の楽天モバイルには、ドコモが回線を貸し出していたが、MNOになった際に、ドコモは、MNO楽天モバイルへのローミング接続を拒否した。

 

困り果てた楽天モバイルは、auとの間で、ローミング契約を締結した。

 

楽天の足下をみたauは、なんと、1Gで500円という、エンドユーザーもビックリするような単価で、楽天モバイルに貸し出すよう条件を突きつけ、サービス展開を急ぐ楽天はそれを丸呑みしたのである。

 

しかし、auローミングの単価があまりに暴利といっていいものであったから、これが巨額の回線貸出料の赤字を楽天に産み出し、楽天モバイル及び楽天グループの大赤字が始まったのである。

 

焦った楽天モバイルは、基地局の全国展開を、サービス開始当初、6年間掛けて全国に基地局を自前で展開すると目標を立てていたが、なんと3年で98.4%まで自前の基地局で接続できるところまで基地局増設を達成した。

 

この副作用は、楽天モバイルの側では、急速かつ巨額の基地局整備費用のために、巨額赤字を膨らませ、楽天グループの資金繰り不安、経営不安を招くところまで顕在化した。

 

しかし、実は、auにおいても、数百億円単位のぼろ儲けで楽天モバイルへのローミング収入がこの数年入っていたのに、楽天モバイルが東京・大阪・愛知のローミングを返上したり、地方でも楽天モバイルの基地局でほとんどのユーザーが繋げるようになったために、ローミング収入が激減するという副作用を招いた。

 

auの社長自身が、同日の会見で、MVNOからの回線賃貸収入や楽天モバイルのローミング収入が今期600億円の減収が見込まれる、今回の楽天モバイルへの都心部へのローミング拡大は、Win-Win、と語っている。

 

auは、新興の楽天モバイルから収奪し、いびり抜いて破綻寸前まで追い詰めたものの、ぼろ儲けのローミング収入に麻薬のように溺れて、その収入減に直面して、今度は逆に焦って、楽天モバイルへのローミング収入確保にしがみついた、という構図である。

 

それで、楽天モバイルがauと再交渉をし、東京・大阪・愛知でのローミングを再開し、その代わりに、回線使用料を大幅に(たぶんMVNOへの回線レンタル料程度か、もしかするとそれ以下もありうる)引き下げた。

 

楽天モバイルにしてみれば、わずか1~2%くらいのカバー率をあげるために都心部で工事費や賃借料など、不効率で莫大な基地局整備をしないといけないところ、その投資はほぼ抑制することができることになり、基地局整備への設備投資額は大幅に抑制することができる。

 

その結果、都心部でも、田舎でも、auプラチナバンド・ローミングが使い放題、電話かけ放題で2980円という、ちょっととんでもない優位性のあるサービスになってしまったのである。

 

楽天モバイルに加入していれば、楽天ポイントも買い物全部プラス3%になるので、ちょっとした楽天ユーザーであれば、大幅な値引きにもなる。

 

ただ、デメリットを指摘しておく。

 

まず、iPhoneユーザーは、ネットでの通信にはなんの問題もないが、iOSの制限が多いため、Rakuten Linkによる電話かけ放題に、一部の機種で制限がある。

 

iPhoneでRakuten Linkアプリは動作保証されていますか?
https://network.mobile.rakuten.co.jp/faq/detail/00001711/

 

Androidユーザーはよほど古い機種でなければ大丈夫である。

 

次のデメリットとしては、実は、楽天モバイルでローミングできるau回線は、あくまで、プラチナバンドのみ(バンド18(26))のみであるということである。

 

このプラチナバンドというのは、低周波数帯で、電波の特性として、エリアは非常に広く、建物の中も通り抜けてくれ、障害物も回り込んで繋がる一方で、通信速度は遅い(載せられるデータ量は少ない)。

 

さらに、プラチナバンドは、混雑しやすい。

 

多くの携帯電話が、他の高周波数帯が一時的に繋がらない場合に、プラチナバンドに繋ごうとして、一度繋がると、他の高周波数帯がすいていても、プラチナバンドで接続し続ける。

 

つまり、もともとの回線速度が遅い上に接続端末が集中しやすく混雑するので、遅くなりやすい特性がある。

 

もっとも、通話ではなんの支障は無いレベルである。

 

田舎でも、au電波の高周波数帯もそれなり基地局が網羅されているので、たいていは早い通信ができるのだが、楽天モバイルの通信速度は、プラチナバンドのみであるため、混雑時はau高周波数帯に繋がっている端末よりはやや遅いのである。

 

それでも、繋がる以上は、支障は無いレベルではあるのだが。

 

これまで、楽天モバイルの繋がらないストレスは、主に、都心部の、地下鉄・地下街・ビル奥・店舗にあった。

 

私も実際それで解約したことがあった。解約時のアンケートには、地下鉄・地下街・ビル奥・店舗で繋がらない、繋がるようになればまた考えます、と書き込んだ。

 

どうも、そう答えて解約したユーザーが大半だったようである。

 

その繋がらないストレスが解消されてしまえば、楽天モバイルは、もはや、最強といって差し支えない。

 

プライベートでも優秀だが、ビジネスではさらに有り難い。

 

スタッフに配布するスマートフォン回線として、最強なのである。

 

屋内で使う限りはWifi接続されているから、データ通信量がほとんど発生せず、3GB以下、つまり月額使用料が980円で、電話かけ放題なのである。

 

仕事で顧客の携帯電話にしょっちゅう掛けるなら、オフィスの固定電話でかけるより、楽天モバイルで掛ければ、通話料は無料である。

 

スピーカーホンにしたり、bluetoothでイヤホンマイクで話したり、スマートフォンでZoomやTeamsに繋いでビデオ会議をしながら、PCでキーボードを打鍵できる。

 

業務専用の端末として私用携帯と別の携帯電話番号があり、LINEでも話せる(勤務時間外はスマートフォン自体の電源を切っておく)。

 

各自が自宅に持ち帰れば、発熱時などは急遽テレワークが可能になる。

 

Wifiがない屋外でも出張先でも自宅でも、ビデオ会議にも十分な通信速度が出るから、支障が無い。

 

普通のユーザーは20GBまで1980円、それを超えても上限2980円で、上限がはっきりしている。

 

スタッフに配布するスマートフォン回線としては最適である。

 

au電波ですら、ドコモ電波ですら、鉄筋コンクリートのビルの奥では届かないことが結構ある。

 

この場合でも、Wifi接続しておけば、楽天モバイルであれば、たとえauローミングでauのプラチナバンドをつかまなくても、Wifi接続経由で、Rakuten Link では通話ができる。

 

そう考えると、スタッフに配布するスマートフォン回線としても、やはり「最強」である可能性が高いであろう。

西村幸三

lawfield.com

京都・烏丸三条にある法律事務所を運営。ニュース・法改正・裁判例などから法務トピックを取り上げていきます。