交通事故、自転車事故で賠償額何億円の判決の時代が来た

最高裁令和2年7月9日判決

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89571

が、後遺障害の逸失利益について、定期金賠償(63年後までの分割払)を認めました。

支払額はゆうに数億円に登ることになります。

事案は4歳の被害者の高次脳機能障害なので、中間利息控除はあまりに酷だったのです。

全身不随事案などにはよくそういう事案があります。

しかし、この最高裁判決の一般的基準の定立の論旨において、定期金払の認められる場合があまり限定がかけられていないように思われ、戸惑います。

しばらく、実務が混乱しそうな気もします。

保険会社はどう対応するのか。

裁判例を積み重ねないと、分割払い(定期金払い)を認めるか、認めないかの判断が難しい。

学生の自転車事故でも、被害者全身不随事案となれば、数十年で数億円といった賠償というケースが出てしまうでしょう。

こんな賠償判決を受ければ、自己破産以外に選択はありません。


自転車保険でも、こうなると5000万1億くらいではとても足らない・・・。

自動車保険付保の個人賠償特約は、同居家族込みで無制限の個人賠償保険です。

無制限の個人賠償保険でないと、家族が自転車を乗り回すのも危ないな、と感じます。

小さい子供、中学生などでは、親まで訴えられることがあります。

うちの事務所でもそういう数億円単位で訴えられた自転車案件を訴えられた側でお引き受けして、本当に胸を痛めたことがあります。

なお、最高裁令和2年7月9日判決が定期金賠償を認めた論旨は以下の通りです。どういう場合に一時金請求しか認められないのか、定期金賠償も認められるのかは、裁判例の蓄積をまたないといけないように思われます。

したがって,被害者が事故によって身体傷害を受け,その後に後遺障害が残った場合において,労働能力の全部又は一部の喪失により将来において取得すべき利益を喪失したという損害についても,不法行為の時に発生したものとして,その額を算定した上,一時金による賠償を命ずることができる。しかし,上記損害は,不法行為の時から相当な時間が経過した後に逐次現実化する性質のものであり,その額の算定は,不確実,不確定な要素に関する蓋然性に基づく将来予測や擬制の下に行わざるを得ないものであるから,将来,その算定の基礎となった後遺障害の程度,賃金水準その他の事情に著しい変更が生じ,算定した損害の額と現実化した損害の額との間に大きなかい離が生ずることもあり得る。民法は,不法行為に基づく損害賠償の方法につき,一時金による賠償によらなければならないものとは規定しておらず(722条1項,417条参照),他方で,民訴法117条は,定期金による賠償を命じた確定判決の変更を求める訴えを提起することができる旨を規定している。同条の趣旨は,口頭弁論終結前に生じているがその具体化が将来の時間的経過に依存している関係にあるような性質の損害については,実態に即した賠償を実現するために定期金による賠償が認められる場合があることを前提として,そのような賠償を命じた確定判決の基礎となった事情について,口頭弁論終結後に著しい変更が生じた場合には,事後的に上記かい離を是正し,現実化した損害の額に対応した損害賠償額とすることが公平に適うということにあると解される。
そして,不法行為に基づく損害賠償制度は,被害者に生じた現実の損害を金銭的に評価し,加害者にこれを賠償させることにより,被害者が被った不利益を補塡して,不法行為がなかったときの状態に回復させることを目的とするものであり,また,損害の公平な分担を図ることをその理念とするところである。このような目的及び理念に照らすと,交通事故に起因する後遺障害による逸失利益という損害につき,将来において取得すべき利益の喪失が現実化する都度これに対応する時期にその利益に対応する定期金の支払をさせるとともに,上記かい離が生ずる場合には民訴法117条によりその是正を図ることができるようにすることが相当と認められる場合があるというべきである。
以上によれば,交通事故の被害者が事故に起因する後遺障害による逸失利益について定期金による賠償を求めている場合において,上記目的及び理念に照らして相当と認められるときは,同逸失利益は,定期金による賠償の対象となるものと解される。

西村幸三

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京都・烏丸三条にある法律事務所を運営。ニュース・法改正・裁判例などから法務トピックを取り上げていきます。