ふるさと納税訴訟で泉佐野市勝訴

総務省がふるさと納税制度から泉佐野市を排除した事件(泉佐野市勝訴)の最高裁判決(令和2年6月30日判決、読んで、正直に言って、笑ってしまいました。


https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89537


平成30年11月1日から同31年3月31日まで,同市の寄附金の受領額は約332億円。1026品目の返礼品の返礼割合平均43.5%,そのうち745品目は地場産品ではなかった。


「100億円還元キャンペーン」等と称して,従来の返礼品に加えて寄附金額の3~20%のアマゾンギフト券,同年4月2日から令和元年5月31日まで,「300億円限定キャンペーン」「泉佐野史上,最大で最後の大キャンペーン」と称し,寄附金額の10~40%のアマゾンギフト券を交付

だったそうです(笑)

「泉佐野市いくらなんでもやり過ぎだろ!叩き売りセールじゃあるまいし、ふざけるな!」と言わんばかりに書き並べて、結論は泉佐野市が勝訴。

総務省の性善説、敗れたり。

総務省への忖度自治システム敗れたり。

というところ。

宮崎裕子裁判官の補足意見が、とても冷静で、面白かったです。長いですが引用します。

裁判官宮崎裕子の補足意見は,次のとおりである。
私は,法廷意見に賛成するものであるが,その理由を,本件の背景にあるいくつかの問題を俯瞰しつつ補足しておきたい。
ふるさと納税制度は,「ふるさとやお世話になった地方団体に感謝し,若しくは応援する気持ちを伝え,又は税の使いみちを自らの意思で決めることを可能とすることを趣旨として創設された制度」であることは本件告示の中でも触れられているとおりであるが,「ふるさとやお世話になった地方団体に感謝し,若しくは応援する気持ちを伝え」という部分は,この制度に基づいて地方団体が受け取るものは寄附金であることを前提としたものとして理解できるのに対して,「税の使いみちを自らの意思で決めることを可能とすること」という部分は,この制度に基づいて地方団体が受け取るものは実質的には税であることを前提として,一定の限度で税の配分を納税者の意思で決められるようにするというものであるから,前者の趣旨とは前提を異にしていることになる。
もし地方団体が受け取るものが税なのであれば,地方団体がその対価やお礼を納税者に渡す(返礼品を提供する)などということは,税の概念に反しており,それを適法とする根拠が法律に定められていない限り,税の執行機関の行為としては違法のそしりを免れないことは明らかであろう。他方で,地方団体が受け取るものは寄附金であるとなれば,地方団体が寄附者に対して返礼品を提供したとしても,返礼品は,提供を受けた個人の収入金額と認識すべきものにはなるが,納税の対価でも納税のお礼でもなく,直ちに違法の問題を生じさせることにはならない。
本件改正規定は,ふるさと納税制度の創設以来の趣旨をそのまま維持し,同制度に基づいて地方団体が受け取るものは寄附金であるという前提も維持したまま,返礼品の提供を法令上正面から適法なものとして容認し,指定対象期間ごとに指定を受けた地方団体に対する寄附金のみを特例控除の対象とする本件指定制度を導入することを定めるものである。この法改正は,立法府としては,本件改正規定の施行前後を問わず,地方団体が受け取るものは寄附金であるから,返礼品の提供自体が,例えば税の対価であるなどとして違法視されるべき理由はないと考えていたことを確認し,明確化したものといえるであろう。そして,本件改正規定は,ふるさと納税制度の創設当初から掲げられていた,寄附金であることを前提とする制度趣旨と実質的に税であることを前提とする制度趣旨が,共にバランスよく達成されるために不可欠と考えられる返礼品の提供に係る調整の仕組みを,初めて導入したものである。それが本件指定制度であり,今後更に改善が必要となる可能性もあるかもしれないとしても,そのような仕組みが初めて法律に定められたことに大きな意味がある。逆からいえば,本件改正規定の施行前のふるさと納税制度を定める法律は,そのような調整の仕組みを欠いていたということになり,そのために,地方団体が受け取るのは寄附金であるという前提で行われていた返礼品の提供が,地方団体間の実質的な税配分の公平を損なう結果を招くことになるのではないかという問題を顕在化させることになったのである。
そもそも寄附金と税という異質なものが制度の前提にあることを考慮すると,上記の調整の仕組みを欠いた状態で本件改正規定の施行前に地方団体が行なった寄附金の募集態様や返礼品の提供という行為を,制度の趣旨に反するか否か,あるいは制度の趣旨をゆがめるような行為であるか否かという観点から評価することには無理がある。また,ふるさと納税制度の趣旨は本件改正規定の施行前後を通じて同じであるものの,本件改正規定によって同制度における寄附金の募集態様や返礼品の提供に適用される規範が新しく定められたのであるから,本件改正規定の施行前の行為が制度の趣旨に反するか否かを,本件改正規定の施行後の行為に適用されるべき規範によって評価することはできない。本件改正法又は他の法令に別段の規定があればその限りではないが,そのような規定は見当たらない。
そして,本件が,国と私人の関係に関する問題ではなく,国と地方団体の関係に関する問題であることを考慮しても,法廷意見で指摘されている関与の法定主義に鑑みて,上記の分析が妥当しないと考えるべき理由は見当たらない。
以上の諸点を踏まえると,法廷意見の第4項は本件改正規定の解釈(地方税法37条の2第2項による委任の範囲の解釈)として妥当であると思料する。

 

 

西村幸三

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京都・烏丸三条にある法律事務所を運営。ニュース・法改正・裁判例などから法務トピックを取り上げていきます。