リモートワーク(テレワーク)について

西村法律事務所でも、リモートワークは、4月下旬から5月下旬にかけて実施した。

多くの企業や官庁・団体などでもテレワークを実施していたが、電話をしても担当者が折り返し電話が来ずで、なかなかに段取りひとつひとつが進まない場面があった。

例に違わず、多くの法律事務所でもテレワークに入っていたが、テレワークというより「間引き勤務」「自宅待機」に近かったようである。

西村法律事務所では、テレワーク実施にあたって、全スタッフにSSD登載・メモリ8GBのMicrosoft Office入りPCを用意、マイクロソフトアカウントやGmailサブアドレスを追加配布してメーラーに設定して貸与した。

PCも品不足でHDDモデルしか買えない状態だったので、買ったその日に必要な設定の上、筐体を開けてSSDに自分で換装した。

既存のPCも含めて、PC十数台を、HDDからSSDに自分で筐体を開けて換装し、メモリも増設した。

携帯電話回線についてはもともと各弁護士の分以上に余分に契約していたが、スタッフを含めテレワーク組全員に行き渡るように、楽天モバイル(容量無制限、かけ放題で2980円/月。1年間無料)を、追加契約した。

Wifi電波が自室に届かないというスタッフには中継機を購入して貸与した。

事務所のフリーアドレスデスクの中央に、モバイルPC+スピーカーフォンを設置し、Skypeでテレワーク組全員と常時、音声接続した。

全員がいつも通りそこにいるような臨場感だった。

さらに弁護士全員にスピーカーフォンを貸与し、快適性を確保した。

紙の資料は、ゼロックスの複合機にスキャンで流し込んで、送信先には各スタッフのメールアドレスを指定すればPCで見られた。

事務所内のネットワークハブやWifiルーターを最新・高速のものに交換した。

自宅のWifiルータも同様に交換した。

ZOOM、Teams、Skype、Webexは、PCでもスマートフォンでも二重化して対応できるように検証作業を重ねた。

その他のWeb会議ツール(LINE、facebook messenger、Google meet 、Duo)なども、相手次第ですぐ対応できるように実験しておいた。

結論としては、事務所に全員がいるのとそう変わらない臨場感とコミュニケーション、パフォーマンスを確保できていた。

もともとスタッフ全員が関係者全員宛メールで報連相を重ねていたので、コミュニケーション不足という事態は全く起きなかった。

秀丸メールは表示や検索が極めて早く、振り分け機能も高度で、事務所内、事務所外の情報を集約するWebコミュニケーションツールとして、汎用性があり優秀であることを、再認識した。

Teams、Chatwork、G Suite、Slack、いろいろWebコミュニケーションツールはあるが、多くのクライアントは、各企業の制約とリテラシーから、電話、FAX、電子メール、ショートメール、ときにLINE、messengerと、環境はカオスである。ビデオ会議はZOOMが多かったがSkypeもWebexもあった。

相手に合わせてもらうより、自分がビデオ会議ツールくらいを合わせた方が、リテラシーのバランス上スムーズで、ストレスが無かった。

Gmailは秀丸メールで読めるように設定が可能であり、それで電子メールへの情報集約をすることによって、秀丸メールが(ビデオ会議以外はほぼ)単体で、事務所内外とのWebコミュニケーションツールとして十分機能した。

こちらからWebコミュニケーションツールのビデオ会議に頼らなくても、携帯電話カケホを貸与して全員が持っていれば、こちらからかける分にはテレワークだろうとさして変わらないのである。

スマーフォンのSNSやWebコミュニケーションツールのファイルは、GoogleドライブやGmailで共有して、PCに転送・集約した。

テレワーク中、電話がかかってきても、折り返しをスムーズに担当事務局や弁護士から電話するので、多くの方は、西村法律事務所がテレワークをしていることにも、気付いていなかったかもしれない。

法律事務所はクライアントその他の間でリアルな文書を扱うことは避けられない仕事であり、セキュリティ上も全員テレワークは無理である。

実現する意味のない無理な目標は立てない。

最大限出勤を削って75%減は可能とはわかった。

50%減ならほぼ通常時と変わらない。

弁護士の方が事務員よりテレワークになじむ。

スタッフがインフルエンザで回復後の自宅待機中もこれなら普通にテレワークで業務をこなせるとわかった。

リスク耐性は上がった。

私と言えば、国内出張・海外出張・バカンスの間に、これまでやっていた働き方と、テレワークというのは、あまり変わりが無かった。

バカンス地で仕事するのをワーケーションというようになっている。

以前から、海外では050モバイルIP電話に転送し、折り返しは海外SIMでLINEコールクレジットを使えば、国内料金で話せた。

今後は楽天モバイルならば、090受発信がRCS化(データ通信化)されているので、海外SIMをDSDV端末に2枚挿しするかWifi下にあれば、国内かけ放題の中で090番号で話せる。

自宅のデスクでは、PC2台、スマートフォン、ガラホを置いて、1台はスカイプ、1台は資料閲覧、スマートフォンでZOOMなどWeb会議やSNS、ガラホで電話といったありさまだった。

かえってテレワークで労働密度が上がり、特に一日中座ってモニターに向かうという生活は、なんとも心身のバランス上良くなくて、結構消耗し、一日の最後には運動しないと翌日に響いた。

また、すぐ目が痛くなった。

というのが、テレワークのオチであった。

世間では、テレワークでヒマだったという話が巷に出ていた。

が、私には「それって仕事してないだけでしょ?何を自慢?」「わずかな投資をケチって、サボり、サボらせてるだけでしょ?」と、ある意味不思議、ある意味優雅でうらやましい、というところだった。

スタッフ全員に、カケホ携帯電話、モバイル回線、SSD搭載PC、高速Wifiルータ、中継器を貸与すれば、かなりの課題は解決するのでは?

リモートデスクトップを導入すれば、事務所のPCを外から操作できたが、全員がやるとなると懸念は拭えず、セキュリティ上、VPNであってもポートを開けたくなかったので、リモートデスクトップは控えた。

リモートワークに取り組んだ4月5月であっても、コロナからの経営危機や生活危機で、必死の形相で、駆け込んで、すがりついてこられる人たちには、やはりリアルでの面接対応、資料確認もそして笑顔で安心させて送り出してあげることが必須だった。

こちらが、ZOOM会議でお願いします、と言っては、そんなリテラシーの無いおじいちゃんおばあちゃん相手には、資料も受け渡しできず、打ち合わせも成立せず、下手をすれば一家心中、顔を見て対応してあげないと命に関わったのである。

そもそもメールと電話で普通に仕事を進めていれば、わざわざZoom会議をやらなくてもたいていの仕事は回った。実は映像のあるなしの違いだけなのだから。電話の方が目も疲れないし集中できると感じた。

むしろ無駄な会議はもともと削減すべきという派であった。

メールの非同期コミュニケーションに質の優位性を感じていたので、取り立ててZoom会議に踊ることもなかった。

なお、テレワークで、案の定というか、自分はオーバーワークでふらふらになったので、スタッフには、ワークライフバランスが重要として、勤務時間中以外は、貸与携帯電話の電源は一切切らせていた。

西村幸三

lawfield.com

京都・烏丸三条にある法律事務所を運営。ニュース・法改正・裁判例などから法務トピックを取り上げていきます。